GMOサインがAI自動入力を提供 安全性を担保しつつ契約管理を効率化

2025年12月11日、GMOグローバルサイン・ホールディングス(日本・東京)は、電子契約サービス「GMOサイン」にAIによる文書情報の自動入力機能を実装した。入力データがAI学習に使用されないMicrosoftのLLMを用い、契約管理の負荷を下げながら情報保護を強化する仕組みが特徴だ。
AIで契約書の主要項目を自動抽出し紙文書の管理も効率化
GMOグローバルサイン・HDが発表した新機能「AI自動入力」は、契約書の「契約取引日」「契約満了日」「取引金額」など、管理に必須となる項目をAIが読み取り、自動で入力する仕組みである。紙の契約書をスキャンしてデジタル化する際にも対応し、従来必要だった手作業の確認・入力工程を大幅に削減できる。
背景には、企業や自治体で進むDXと、過去の紙契約が大量に残る現場のギャップがある。紙の契約書を扱う際は目視確認と手入力が避けられず、工数が膨らむだけでなく、ヒューマンエラーの温床にもなっていた。また、安全性が不十分なAIツールに機密文書をアップロードする誤用も社会課題となり、IPAが公式に注意喚起を行う状況が続いている。
今回の機能は、入力データが学習利用されないMicrosoftのLLM(※)を採用し、文書ごとにAI読み取りの可否を設定できるオプトアウト方式にも対応する。社外秘情報を含む契約書にも安心して使えるよう設計されている点が大きい。「ビジネスプラン」「エンタープライズプラン」では追加料金なく利用でき、既存ワークフローに即時組み込める。
(※)LLM:Large Language Modelの略。大量テキストを学習し言語処理を行うAI。今回採用されたMicrosoftのLLMは、入力データが再学習に利用されない仕様を持つ。
契約DXの加速とAI依存リスク 運用設計が競争力を左右する
AI自動入力の提供は、契約管理の効率化をさらに進める可能性がある。
大量の契約書を扱う企業にとっては、担当者の工数削減に加えて、入力精度の向上が内部統制の強化に寄与することも期待される。
業務フローが標準化されることで、監査対応の負荷が軽減し、情報の一元管理が進む可能性もある。
一方で、AI活用に伴う依存リスクは引き続き意識する必要がある。
読み取り精度が高まっても、誤認識を見落とさないためのチェック体制は不可欠であり、とりわけ法務・財務情報では人的確認を適切に残す運用が求められる。
AIに処理を任せきりにした場合、誤入力に気づかないまま運用が進むリスクは排除できない。
将来的には、契約管理の前後工程から契約書の作成、リスク分析、更新通知などにもAIが活用領域を広げ、企業のDXが段階的に進展していく可能性がある。
GMOサインは上場企業の利用比率が高く、市場への影響力も大きいため、今回の機能拡充は、安全性を考慮したAI活用の一つのモデルケースとして、電子契約市場の方向性に影響を与える可能性がある。
関連記事:
住友電工情報システム、生成AI搭載「楽々Document Plus」で文書管理効率化

GMOインターネットグループ、「ビジネス スーパーインテリジェンス構想」を発表 AIで会議や対話をデータ化し“組織の資産”として活用へ












