ChatGPTで作業時間が1日約1時間短縮 OpenAIが企業AI利用の実態を公開

2025年12月8日、米OpenAIは企業におけるAI活用の実態をまとめたレポートを発表した。調査では、ChatGPTの導入により労働者が1日40〜60分を節約する効果が確認され、AIが業務の質と速度を大きく押し上げていることが示された。
企業利用が急拡大、作業時間短縮と高度化が同時進行
OpenAIが公開した「state of enterprise AI」レポートは、ChatGPT Enterpriseをはじめとした企業利用の急伸を裏付けている。
ChatGPT内での週次メッセージ数は過去1年で約8倍、利用者の1人あたりメッセージ数も30%増加し、AI活用が常態化しつつある状況が明確になった。
さらに、プロジェクト機能やカスタムGPTによる構造化ワークフロー(※)の利用は19倍に増え、企業内の定常業務へ深く組み込まれる傾向が強まっている。
今回の分析では、およそ100社を対象にした、9,000人規模の労働者調査も併用され、75%が「作業速度または品質が向上した」と回答した。
1日あたり40〜60分の節約効果が平均で見られ、熟練ユーザーでは週10時間超を削減した例も報告されている。
部門別ではITの87%がトラブル解決の迅速化を実感し、マーケティング・製品部門では85%が業務処理の高速化を挙げた。
業務範囲の拡張も特徴で、非技術者によるコーディング関連メッセージが36%増加しており、AIが専門性の壁を低くする効果が表れている。
また、利用が進むほど時間節約が加速する傾向も観測され、AIが「作業高速化」から「新たな能力拡張」へと役割を広げているようだ。
※構造化ワークフロー:定型業務を自動化し、手順を標準化する仕組み。AIと連携することで文書生成、分析、意思決定補助などを一体化できる。
格差拡大と導入負荷への対処が鍵
今回のレポートが示す最大の論点は、AI活用が企業間・組織内の格差形成を促す点である。フロンティア層と呼ばれる上位5%のユーザーは、平均の6倍のメッセージを送り、高度なタスクへの利用も進んでいる。
企業単位でも、積極企業は1席あたりのメッセージ送信量が2倍に達し、AIを中核業務へ統合し始めている。
これらの企業では、意思決定の高速化やプロダクト開発の効率性が急速に高まる可能性がある。
一方で、こうした深化はリスクも伴う。導入体制や教育不足の企業では、AIを活かせる人材と活かせない人材の差が広がり、内部のスキル格差が固定化する恐れがある。
また、OpenAIの発表では、機能の更新頻度が「3日に1回」のペースで続いているとしているが、組織が変化についていけない場合、ツールの価値を十分に引き出せない構造的問題が生じるだろう。
地域別の動向では、日本が米国に次ぐ企業API利用国であり、国内でも競争力強化の鍵としてAI統合が進むと予測される。
今後の重要な論点は、AI導入そのものではなく、部門横断の運用ルールやガバナンスをどう整備するかに移ると考えられる。
AIが単なる効率化ツールから企業の業務プロセスの欠かせないピースへ進化する中、戦略的な活用設計が企業価値を左右すると言える。
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