マネーフォワードがAIで契約書解析 新リース会計基準対応の支援機能提供

2025年12月3日、株式会社マネーフォワードは国内向け契約管理サービス「マネーフォワード クラウド契約」において、新リース会計基準への対応を支援するAIエージェント「リース識別エージェント」を提供開始した。契約書の解析から判定要素の抽出までを自動化し、企業の経理部門の負荷軽減を狙う。
AIがリース契約を自動抽出し新会計基準対応を効率化
マネーフォワードが新たに提供する「リース識別エージェント」は、電子化された契約書をAIが解析し、新リース会計基準(※)におけるリース取引となる該当性を一次判定する機能を備える。契約条文の根拠や仕訳に必要な要素を抽出し、後続の会計処理まで連携可能な点が特徴だ。
今回の開発は、同社経理本部が推進してきた早期適用プロジェクトの実務知見を反映したものとなる。現場で蓄積されたフィードバックをベースに改善を重ねたことで、経理担当者の運用に直結する精度を実現したとされる。
リース契約の洗い出しは、新基準対応のなかでも企業が最も負担を感じる工程とされ、一定期間内に大量の契約書を確認する必要がある。同社グループCAO・松岡俊氏は「契約抽出から根拠提示までを自動化することで、網羅性と工数削減を両立できる」とコメントしている。
同エージェントは、2025年11月提供開始の「マネーフォワード クラウドリース会計」と併用することで、リースの識別から後続の会計業務まで一連の業務がスムーズに対応できる。2027年4月以降に上場企業・大企業へ適用される新リース会計基準を見据えた提供である。
リース会計基準(※):企業がリース契約から生じる資産・負債をどのように計上するかを定めた会計ルール。新基準では多くのリース取引を貸借対照表に計上する必要が生じ、契約の識別作業が増大する点が特徴。
会計DXはAXへ進化 自動化の加速とリスク管理の両立が課題に
リース契約の自動識別は、バックオフィス領域におけるAI活用が“DXからAX(AIトランスフォーメーション)”へ移りつつある流れを示す動きと位置づけられる。
これまで担当者が契約書を一件ずつ読み解いてきた作業をAIが事前に判定できるようになれば、経理部門の生産性向上につながる可能性は高い。
一方で、AI判定に過度に依存することへの懸念も残る。契約条文の表現ゆれや例外的な取引条件などにより、機械的な抽出だけでは判断が揺らぐケースも想定される。
特に新基準の初期段階では企業側の経験値も蓄積途上のため、最終確認を行う体制づくりが重視されそうだ。
メリットとしては、判定作業の省力化により後続業務へ人員を再配分できる点が挙げられる。短期間に大量の契約を精査する必要がある企業ほど効果は大きいと見込まれる。
また、将来的には他の会計領域や税務判定にもAIエージェントが応用され、バックオフィスの自動化範囲がさらに広がる可能性もある。
ただし、AIが自律的に業務を担う領域が拡大するほど、アルゴリズムの透明性や誤判定が発生した際の責任範囲といったガバナンス面の検討が不可欠になる。
マネーフォワードが実務適合性と統制面の両立をどのように図っていくかが、今後の注目点となる。
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