姫路市が生成AI福祉相談窓口を開設 関西初の導入で重層的支援強化

兵庫県姫路市は、株式会社ZIAIと連携し、生成AIを活用した福祉相談窓口「福祉つながる相談窓口」を2025年12月1日から本格稼働したと発表した。
重層的支援体制整備事業の一環として実施され、日本国内では関西で初の取り組みとなる。
姫路市、生成AI活用の福祉相談窓口を12月から本格運用
株式会社ZIAIは2025年12月5日、姫路市と連携し、生成AI技術を活用した「福祉つながる相談窓口」を2025年12月1日に本格稼働したと発表した。
運営には傾聴AIアルゴリズムを開発するZIAIが参画し、市の重層的支援体制整備事業の中核施策として位置づけられる。
本事業は、2021年4月施行の改正社会福祉法により創設された重層的支援体制整備事業(※)に基づくものだ。
介護、障害、子育て、生活困窮など分野別に分断されがちな相談体制を横断し、複合的な課題を抱える市民を包括的に受け止めることを目的としている。
姫路市では2022年度から同事業を開始し、「福祉つながる窓口」を設置してきたが、相談者は40代以上が中心だった。
そこで、市は若年層や時間外ニーズへの対応策として、2024年10月17日から12月17日まで生成AIを用いた実証実験を実施した。
実証期間中の相談件数は521件にのぼり、AIとの対話時間は計192時間を記録した。
利用者の過半数は10〜30代で、満足度は70%、リピート率は24%となった。これらの結果を受け、正式導入が決定された。
姫路市は今後、相談データの分析を通じて市民の潜在的ニーズや地域課題を可視化し、重層的支援体制整備事業のさらなる充実を図るとしている。
※重層的支援体制整備事業:社会福祉法改正により創設された制度で、属性や分野を問わず相談を受け止め、複雑化・複合化した生活課題に対し、多機関が連携して包括的な支援を行う仕組み。
AI福祉相談が拓く重層支援の入口
姫路市が生成AIを福祉相談の入口に据えた点は、重層的支援体制を実効性あるものにするための現実的な対応だと言える。
分野ごとに分断されがちな相談体制の中で、AIが一次対応を担うことにより、市民は時間や心理的負担を意識せずに悩みを言語化できる。
実証実験では若年層の利用が多く、相談件数や対話時間、満足度といった結果も示されており、従来窓口では拾い切れなかった層への接点拡大という効果は確認された。
一方で、満足度は7割にとどまり、リピート率も4分の1程度である点は、AI相談が万能ではないことを示している。
複雑な事情や継続的な支援を要するケースでは、人の関与が不可欠であることは明確だと言える。
市が示すように、AIが入口を担い、職員が伴走型支援に注力する役割分担が機能すれば、相談体制全体の質は高まる可能性がある。
今後は本格運用を通じ、AIと人の連携がどこまで定着するかが問われるだろう。
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