生成AI導入企業の6割が人材スキルに課題 経営者が示すギャップの実像と対策

長野県の株式会社devが生成AI導入企業の経営者252名を対象にしたスキルギャップ調査を公表した。その結果、国内企業の多くが従業員の生成AI活用力に課題を抱えている実態が浮き彫りになった。
生成AI活用を巡り経営者が捉える「人材の不足」
2025年12月4日に発表された株式会社devの調査結果から、企業が従業員に求める生成AIスキルの水準が着実に引き上がっている実態が浮かび上がった。
最も多かった要望は「定型業務に活用できるレベル」で約3割を占め、まずは日常業務に自然に組み込める基礎的スキルを期待する姿勢が示されている。
また、実務への適用範囲はさらに広がっている。経営者が特に重視しているのは「生成AIを業務に適用・統合する能力」が55.8%、「データ活用・分析能力」で50.6%などの応用的なスキルだ。
しかし、こうした期待に対し、現在の従業員スキルの到達度には大きな開きがある。経営者の65%以上が従業員のスキルを「普通以下」と評価し、さらに経営者の約6割は求めるレベルとの間に明確なギャップを感じている。
不足しているスキルとして最も多く挙がったのは「データ分析能力」で、次いで「AIを活用した業務プロセス改善能力」「生成AIの仕組みの理解」が続いた。
こうした現状を踏まえ、企業側も対策を講じ始めている。
代表的な取り組みとしては、社内研修の強化や外部セミナー・ワークショップへの参加支援が広がっている。
他にも、eラーニングコンテンツの導入・提供や報酬・昇進への反映、資格取得支援など、従業員の生成AI活用スキル向上は多岐にわたる。
今回の調査を受け、devは企業のデータ活用やDX推進を支援する体制を強化しており、戦略設計から人材育成まで一貫して支える姿勢を示している。
スキルギャップは定着の壁に 企業は人材育成へ舵切り必須
devの調査により、企業が従業員に求める能力の輪郭が明確になったことで、育成施策をどこに重点投下すべきかが判断しやすくなったと言える。
「業務への統合能力」や「データ分析力」といった応用領域が重視されている点は、企業が生成AIを単なる効率化ツールではなく、業務変革の中心に据えようとしている姿勢を示すものだと考えられる。この方向性は、生産性向上や新規価値創出につながる土台にもなりそうだ。
しかし、求めるスキル水準が上昇する一方で、従業員側の習熟度が追いついていない実態は、企業のAI活用の定着を鈍らせる要因になりかねない。特にデータ分析やプロセス改善などは短期の研修で身につくものではなく、学習継続の仕組みがなければ習得が停滞するリスクがある。
また、AIの技術進化が速すぎるがゆえに、育成施策そのものが陳腐化する懸念も拭えない。企業にとって「学び続ける基盤」を構築できるかどうかが、今後の分岐点になっていくだろう。
今回の調査が示した「課題の可視化」は、企業の変革を後押しする兆しでもある。
スキルギャップが自覚された分だけ、学習への投資が正当化され、組織の仕組みとして育成を継続する動きが広がる可能性がある。
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