デジタル庁が国内AI翻訳を採用 ガバメントAI「源内」で行政文書の精度向上へ

2025年12月2日、デジタル庁はPFN(Preferred Networks)の国内開発AI「PLaMo翻訳」を、政府向け生成AI利用環境「源内」を通じて政府職員に提供すると発表した。まずは12月中にデジタル庁内運用を開始し、2026年以降は他府省庁へ展開する方針である。
国内開発「PLaMo翻訳」を源内に実装し行政文書の翻訳精度を強化
デジタル庁は、政府業務における生成AI活用を本格化させる一環として、PFNが開発する国内開発AI「PLaMo翻訳」を採用した。PLaMoは海外LLM(※)をベースとせず、アーキテクチャ設計から学習までを国内で完結させた日本語特化型モデルである。長文でも欠落や表記揺れが少なく、行政文書特有の定型表現にも対応できる点が評価されたとみられる。
今回の導入は、政府が安全なAI環境として整備を進める「源内」において運用される。源内は各府省庁が共通で利用できるセキュアな生成AI環境として構築が進められており、翻訳業務のような基盤的なタスクに最適化されたAIを実装する。
デジタル庁は、まずデジタル庁内での利用を通じて検証を進め、2026年以降に他府省庁へ展開する計画を示している。行政全体でのAI活用拡大に向けた大きなステップになると考えられる。
※LLM(※):Large Language Model(大規模言語モデル)の略称。大量のテキストを学習し、文章生成や翻訳などを行うAIモデル。
行政DX加速へ 国産AI活用がもたらす機会と統制面の課題
PLaMo翻訳の採用は、行政DXにおける国産AIの役割を広げるきっかけになり得る。まずメリットとして、日本語中心で学習されたモデルを利用することで、行政文書の翻訳精度が比較的安定しやすく、職員の作業負荷軽減につながる可能性がある。
文脈の一貫性を確保しやすい国産モデルは、説明責任が重視される行政業務との親和性が高いとの指摘もある。また、安全性基準を満たした環境で運用されるため、機密性の高い文書を扱う場面でも利用しやすい点は利点と言える。
一方、課題も残る。翻訳以外の領域では海外LLMの性能が優勢とされるケースもあり、業務ごとにどのAIをどう配置するかという設計は引き続き検討を要する。また、AI導入に伴うガバナンス強化や誤生成対策、利用ルールの徹底といった統制面の負担は増える可能性があり、全府省庁で共通の運用基準をどこまで整備するかが論点となる。
将来的には、PLaMo翻訳の活用実績が蓄積されることで国内開発AIのユースケース拡大につながる可能性もある。
行政での実務適用が進めば、民間領域へと波及し、日本語特化型モデルの競争力向上に寄与するとの見方も出ている。
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