ソニーがAWSのAI基盤を全社導入 安全なエージェント活用で創造性とファン体験が進化

米ラスベガスで開催中の「AWS re:Invent」において、AWSはソニーがAmazon Bedrock AgentCoreを中核としたエンタープライズAI基盤の全社展開を進めていると発表した。AIエージェントの高度化により、業務効率とファン体験を支援する。
AIエージェントを全社展開し業務と体験を同時に強化
2025年12月2日、AWS(Amazon Web Services, Inc.)は、ソニーが同社のAIサービス群を採用し、生成AIとAIエージェントの活用を全社で加速していると明らかにした。
基盤にはAmazon Bedrock AgentCoreが用いられ、エンタープライズレベルのセキュリティと可観測性を維持したまま、AIエージェントを統合的に構築・運用できる体制が整備されたという。
ソニーの社内基盤では1日あたり15万件の推論リクエストを処理し、社員のコンテンツ作成や問い合わせ対応、不正検出、予測、ブレインストーミング、新しいアイデアの起案など幅広い業務を支援している。この処理量は数年で300倍に達する可能性があり、AI利用の急拡大が前提となる。
さらに、Amazon Nova Forgeプログラムを通じて構築されたAIモデルが文書審査プロセスを約100倍効率化する可能性も示された。
一方で、ソニーはファン向けサービスにもAI活用を広げている。
中核となる「Sony Data Ocean」は、グループ各社が保有する500種類超・760TB規模のデータを統合し、Amazon SageMakerなどAWS基盤上で高度に分析する仕組みだ。得られたインサイトはクリエイターへのフィードバックや、同じ興味を持つファン同士をつなぐ体験設計に活かされる。
また、エンゲージメントプラットフォームでは「PlayStation」のアカウント管理や決済、データ基盤といったオンラインサービスのコア機能をAWS上で拡張する。
業務効率を高めながら、より魅力的で一貫したファン体験が実現される見込みだ。
全社AI化が進むソニー 体験革新とリスク管理の両立が焦点に
今後、ソニーのAI活用はさらに加速すると考えられる。特に、PlayStationのオンライン基盤とエンゲージメントプラットフォームを統合する取り組みは、ゲーム、音楽、映画、アニメなど複数領域のファン接点を横断的に結びつける可能性を持つ。
アカウント、決済、データ基盤がAWS上で強化されれば、安定したサービス運用と新規体験の迅速な提供が期待できる。
一方、AIエージェントの規模拡大に伴うガバナンス体制の強化が必須になることはリスクになり得る。データ活用の範囲が広がるほど、セキュリティやプライバシー管理の負荷が高まるため、透明性の確保が課題となるだろう。
さらに、AI依存が進むことでクリエイター自身の判断プロセスに新たな調整が求められる局面も想定される。
それでも、ソニーの「クリエイティビティとテクノロジーの融合」という方向性とAWSの安定したAI基盤の組み合わせは、エンターテインメント産業の将来像を再定義する一歩となりそうだ。
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