AdobeとAmazonが連携強化を発表 生成AIで創造性と顧客体験を再構築へ

2025年12月2日、米Adobeと米AmazonがAI時代の創造性とマーケティングを再構築するための連携強化を発表した。
AWS re:Inventでの基調講演に基づくもので、生成AI基盤の統合と広告領域での協業が企業の顧客体験の向上を加速させる見通しだ。
生成AIを中核にAdobe製品とAWS基盤を連携強化
今回の発表では、Adobeが展開する主要サービスにAWSのAI基盤を深く組み込むことで、制作・文書処理・マーケティングの各領域におけるAI活用を本格的に拡張する点が示された。
Adobe Expressには対話型編集を可能にするAIアシスタントが搭載され、AWSの推論基盤を活用して高い応答性と安全性を確保する。
PDF編集領域では、Acrobat StudioがAmazon Bedrock(※)を介して複数の基盤モデルにアクセスし、要約や生成作業の自動化を実現した。
生成AIモデル群「Adobe Firefly」はAmazon EC2 P5・P6インスタンスで学習され、S3やFSx for Lustreを記憶領域として利用する構成により、画像・動画生成の速度と効率が向上した。
さらに、広告・顧客接点を担うAdobe Experience Platform(AEP)はAWS環境と統合され、リアルタイムデータの統合、オーディエンス構築、施策配信を一元管理できるようになった。
マーケティング分野では、GenStudio for Performance Marketing がAmazon Adsとの連携を開始し、生成AIで作成したクリエイティブを直接配信できる仕組みを構築した。
また、Adobe Real-Time CDP Collaborationにより、企業と広告媒体がファーストパーティデータを安全に活用し、広告効果の可視化と最適化を共同で進められる体制が整備された。
※Amazon Bedrock:複数社の基盤モデルを安全に利用できるAWSの生成AIサービス。
AI統合で体験価値は向上へ データ管理や運用設計の精度が課題
企業にとって最大のメリットは、制作とマーケティングの双方で生成AIを活用できる統合環境が整うことで、顧客体験(CX)改善の速度を大幅に高められる点だろう。
広告制作における反復作業が自動化されることで、施策立案から配信までのリードタイムは短縮される可能性が高い。また、AEPとAWSの統合により、企業はデータ基盤をまたいだ運用の効率化を実現し、パーソナライズされた体験設計を迅速に展開できるとみられる。
一方で、基盤モデルの選定やデータの共有・活用には慎重な設計が求められそうだ。特に、ファーストパーティデータを扱う領域では、利用目的の明確化やプライバシー保護が不可欠であるため、運用プロセスの透明性確保も課題となるだろう。
AIエージェントを複数連携させる取り組みが進展すれば、業務自動化はさらに加速すると思われるが、誤作動や説明責任の確保といったリスクも増える。
今後は、企業がどこまでAI主導の制作・分析プロセスを組織に定着させられるかが鍵になるだろう。
AdobeとAmazonの連携は、AI主導のCX基盤の標準モデルとなり、その影響は広告、EC、デジタル体験全体へ広がるかもしれない。
関連記事:
グーグル生成AI「Gemini 2.5 Flash Image」 アドビFireflyとExpressに搭載












