大阪府がAIでブロードリスニング実証開始 スマートシティ施策に反映

大阪府はAIなどのデジタル技術を活用した「大阪府ブロードリスニング実証実験」を開始した。府民の生活ニーズをオンラインで広範に収集し、スマートシティ施策の検討に活かす狙いである。
AIが府民の声を分析 SNS投稿から政策検討へ
大阪府は、大阪公立大学やLiquitous社、NTT西日本株式会社と協力し、SNSや専用プラットフォームを通じて府民の意見を集約する実証実験を開始した。
期間は2025年11月27日から12月31日までで、「あなたの生活の中で、デジタル化すれば便利と思うサービスを教えてください。」について意見募集が行われる。
意見は、SNS(XとInstagram)でハッシュタグ「#大阪スマートシティ」を付けて投稿されたもの、アンケート形式ではLiquitous社が提供するLiqlid(リクリッド)の「大阪府ブロードリスニング実証プラットフォーム」に投稿されたものから収集される。
採用するブロードリスニング(※)では、投稿された内容は自動収集され、AIが感情分析やトレンド検出、要約生成などを実施する。
背景には、全国をけん引する大阪モデルのスマートシティ推進戦略がある。デジタル技術を行政判断に活かすことで、府民の意見を収集・分析し、効率的な都市運営の実現を目指している。
※ブロードリスニング:SNSやブログなどに投稿された多数の意見をAIで分析し、社会的ニーズや課題を抽出する手法。リアルタイム性や分析範囲の広さが特徴で、政策立案や企業戦略などに活用されている。
スマート行政への転機か データ活用進展もプライバシー課題
今回の実証は、行政における意思決定プロセスの透明化と迅速化につながる可能性がある。
AIによる意見分析は広範な市民の声を可視化し、従来の少数意見偏重や調査遅延といった課題を補完する効果が期待される。特に、都市交通、行政手続き、医療・福祉サービスなどデジタル化との親和性が高い分野での応用が進むだろう。
一方で、SNSに投稿された意見を収集する手法には、プライバシー保護や感情の誤認識といったリスクも伴う。AI分析が政策判断に直接結びつく場合、アルゴリズムの透明性やデータの偏り対策が不可欠になると考えられる。
また、SNSの利用状況には年齢や所得、デジタルリテラシーによる偏りが存在するため、「見えている声」が必ずしも「社会全体の声」ではないという構造的限界もあると言える。
実証結果が行政プロセスに反映されるかどうかは今後の運用設計に左右されるが、成功すれば国内他自治体への拡大も見込まれる。
大阪が先行モデルとして評価されれば、日本の都市DXの転換点となる可能性がある。
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