クシムがKushim Labsを創設 INTMAXとの提携で企業向けWeb3基盤開発を加速

国内上場企業クシムがブロックチェーン基盤技術の研究開発を担う新組織「Kushim Labs」の設立と、レイヤー2プロトコル「INTMAX」開発元リョダンシステムズとの提携を発表した。企業や行政向けの社会実装を見据えた動きとして注目できる。
クシムが研究開発型組織を設立しINTMAX技術を採用
クシムは2025年11月27日、暗号技術や分散型インフラなどを対象とする研究組織「Kushim Labs」を立ち上げた。
同ラボは外部パートナーとの連携を通じ、Web3に不可欠なセキュリティやプライバシー保護の技術開発を推進する方針である。
所長には、国内外の複数プロジェクトを主導してきた船津圭佑氏が就任する。
「Kushim Labs」は専門性を軸に研究体制を強化するとしており、研究領域にはプライバシー保護や秘匿化データ連携も含まれ、企業・行政向けの応用を視野に入れるという。
同日に発表されたリョダンシステムズとの提携では、ゼロ知識証明(ZKP)を用いたスケーリング手法であるzk-Rollup(※)技術「INTMAX」の支援を受ける。
INTMAXは取引履歴をチェーン上に保持せずに検証可能とするステートレス構造を採用し、オンチェーンで必要となるデータ量を約5バイトにまで抑えることが可能だ。
これにより、元となるブロックチェーンのセキュリティを活かしながら、ガス代削減や処理混雑の緩和が期待される。
国内では個人情報保護法に基づくデータ最小化が求められており、同技術はDID・デジタル証明書、産業領域における秘匿化データ連携、サプライチェーン管理、さらにはRWA(Real World Asset)実証などで注目されつつある。
クシムはINTMAXの技術支援を受けながら、企業向けブロックチェーン基盤開発や実証実験を中心とした社会実装支援を進める構えだ。
※zk-Rollup:ゼロ知識証明を活用し、取引データを圧縮して処理するスケーリング技術。基盤チェーンのセキュリティを維持しつつ、処理性能向上を図る方式。
企業・行政での実装加速も、技術理解と制度整備が課題に
クシムが採用するINTMAXは、ブロックチェーン基盤として高い秘匿性と効率性を備えており、データ活用が求められる企業や公共機関にとって有力な選択肢となり得る。
データ流通とプライバシー保護を両立できる点はWeb3推進における大きなメリットであり、エンタープライズ用途での採用が進めば実装事例を通じて業界全体への波及も期待される。
一方、ゼロ知識証明など高度な暗号技術を前提とする構造は導入コストや運用負荷を伴うため、現場での理解不足がボトルネックになる可能性がある。
さらに、透明性と監査性を確保するための制度整備が遅れており、採用が進むには規制当局との調整も不可欠だと言える。
今後は実証実験の成果が示されることで、企業や行政での導入が加速する可能性があるが、安全性と利便性を両立できるかどうかが、その成否を左右するだろう。
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