りそな銀行とFivot、AI活用のベンチャーデットファンド設立 審査迅速化でスタートアップ支援を強化

2025年11月27日、国内大手のりそな銀行とフィンテック企業Fivotが、シードからミドルステージのスタートアップ向け融資を目的とした「RFC Venture Debt Fund 1号投資事業有限責任組合」を共同で設立した。
AIによる事業評価とデータ分析を組み合わせ、国内ベンチャー資金供給の加速を狙う。
AI与信モデルで審査を高速化し、成長企業の資金調達を後押し
りそな銀行とFivotは、スタートアップ向けの資金供給体制を拡充するため、総額31億円のベンチャーデットファンドを共同で立ち上げた。
無限責任組合員(GP)はFivotが務め、りそな銀行が有限責任組合員(LP)として組成に参画した。
これは、2023年にりそなが開始したベンチャーデット事業を本格的に発展させる取り組みだ。
背景には、中小企業の減少とスタートアップへの期待がある。
日本企業の99.7%を占める中小企業は高齢化などにより減少傾向にある一方、新産業の担い手としてスタートアップの役割が拡大している。
この状況を踏まえ、両社はAIモデルによる迅速な与信判断と、大量データを活用した事業性評価を強化した。
従来の財務データに加え、会計記録や決済履歴、Web情報といった「オルタナティブデータ」を活用することで、創業初期企業にも柔軟かつ精緻な融資判断を行う体制を整えた。
創業期の企業は赤字先行で財務基盤が弱いケースが多く、成長資金の確保に難航しがちであるが、このファンドでは、Fivotが持つAIスコアリング技術を活かし、仕訳帳や銀行データの収集・分析を自動化することで、この課題に応える。
審査書類の準備負担を軽減し、企業側と金融機関側双方の業務効率を高める。将来的には、このAI基盤を一般企業向け融資にも拡張し、従来手法とAI技術を組み合わせたハイブリッド型審査モデルの構築を目指すとしている。
AI審査は融資機会を広げる一方、評価精度や運用負荷に課題も
AIによるデータ分析が迅速な融資判断を可能にすることで、事業の実証段階からスケールフェーズまで切れ目なく資金を届けられる可能性が高まる。
創業者にとっては、書類準備の負担が軽減されることで事業推進に集中しやすくなる点も利点と言える。
今後、ファンドの運用が軌道に乗れば、スタートアップ向けの資金供給は一段と活性化すると見られる。
一方で、AIモデルに依存する審査にはリスクも存在する。データ品質やモデルの透明性、外部環境の変動によるスコアの偏りといった問題は、精緻な運用管理が不可欠となる。
また、オルタナティブデータの拡大は評価の幅を広げる一方、誤差要因の増大にもつながりうるため、ファンド側の審査体制には高度なモニタリングが求められるだろう。
今回の取り組みは、国内スタートアップ金融のデジタル化を象徴する動きであり、りそな銀行が掲げる「金融+」戦略の一環とも重なる。
資金供給の迅速化と精度向上が実現すれば、日本のベンチャー市場の底上げにつながる可能性があるが、その成否はAIの運用品質とガバナンス体制に左右されると考えられる。
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