東大松尾研発「Spark+」が音声AIで電話対応を自動化 レモリフと共同開発し来店予約業務を効率化

東京大学松尾研発のスタートアップである株式会社SparkPlus(Spark+)は、トヨタカローラ香川グループのレモリフと共同で、音声AIによる予約・案内自動化システムを開発したと発表した。
国内の自動車販売店における電話業務の負担軽減を目的とした取り組みで、既存システムとの連携も実装されている。
Spark+とレモリフ、音声AIで予約・案内業務を自動化
2025年11月26日、Spark+は、レモリフと協力し、自動車販売店向けの予約・案内自動化システムを開発したと発表した。
本システムの対象業務は、自動車保険の満期案内や来店予約などの電話対応である。
システムは顧客管理システム「カイクラ」と連携し、AIがアウトバウンド架電から会話、アポイント取得、通話内容の記録までを担当する。
今回導入された音声AIは、自然言語処理技術を用いた対話型エージェントで、文脈を踏まえた応答が可能だ。
24時間の対応、オペレーター転送、FAQ応答、リマインド通知といった機能を備えており、従来のIVR(※)とは異なる柔軟な対話を実現する。
レモリフは本システムをDXプロジェクトとして活用し、電話応対工数の削減、時間外対応による利便性向上、予約率や来店率の改善などを想定している。
Spark+は、今回の取り組みをモビリティサプライチェーンにおけるAI実装のモデルケースと位置づけている。
プロジェクトを通じて得られた知見は、他業種への展開にも活用する方針だ。
地方企業における電話業務の課題として、折り返し対応の遅れや記録作業の負担が挙げられており、今回の導入はこうした背景を踏まえた取り組みとなっている。
※IVR:自動音声応答システムのこと。事前設定された選択肢を案内する方式が一般的。
AI導入が地方DXを後押し 業務効率化と接点改善への期待
今回の取り組みは、電話業務が依然として主要な顧客接点となる自動車販売店において、AI活用の有効性を示す事例と考えられる。
音声AIが発信から案内、予約まで一貫して担当することで、担当者の負荷は抑えられ、限られた人員でも安定した運営を維持しやすくなるだろう。
特に地方企業では人手不足が顕在化しているため、業務継続性の確保という観点でも意義が大きいと言える。
また、AIによる24時間対応は、顧客にとって利用しやすい接点を増やす効果がある。
電話がつながりにくい、折り返しに時間がかかるといった不満が解消されれば、来店率や満足度の向上につながる可能性がある。
一方で、音声AIが担う範囲の拡大には、会話の誤解や案内の齟齬が発生するリスクも残る。
複雑な相談を必要とする場面では人による対応が前提となるため、適切な切り分けが重要になりそうだ。
今回のプロジェクトは、地方企業が抱える課題に対してAIを段階的に導入するモデルケースとなるだろう。
地域ごとの事情に配慮しながら、効率化と顧客体験の両立を図る取り組みとして、今後の展開にも注目したい。
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