住友ゴムとNEC、AI活用でタイヤ材料開発を効率化し研究基盤強化

2025年11月26日、住友ゴム工業とNECは戦略的パートナーシップに基づき、AIを活用したタイヤ材料配合予測と新材料探索の先行実証で成果を確認したと発表した。研究開発効率化を目的とする取り組みである。
AIでタイヤ材料開発を高度化、先行実証で有効性を確認
住友ゴムとNECは、2030年までに世界競争力のある研究開発基盤を構築することを目指し、戦略的パートナーシップ活動を加速している。
今回の先行実証では、疑似量子アニーリング技術(※)を用いたタイヤゴム配合予測と、AIエージェントによる新材料探索の2分野で取り組みを行った。
疑似量子アニーリング技術では、住友ゴムの過去データをもとに膨大な配合パターンを高速解析し、目標特性を満たす配合案を抽出した。
その結果、従来の熟練者による作業と比べて約95%の時間短縮が可能であり、すべてのタイヤカテゴリーで効率化が期待できることが確認された。
一方、AIエージェントを活用した新材料探索では、生成AIとグラフベースAIを組み合わせ、膨大な文献情報や異分野知見を自律的に収集・解析した。これにより、従来の手作業では難しかった新材料候補を効率的に抽出でき、探索期間を60〜70%短縮する成果も得られた。
両社は、これらの先行実証成果を基盤に、長期経営戦略「R.I.S.E. 2035」やNEC Open Innovationの方針に沿った研究開発体制の高度化を推進する。材料開発の迅速化と研究者の技能伝承を両立させる新たな基盤構築を目指している。
※疑似量子アニーリング技術:量子コンピュータの仕組みを模倣し、通常のコンピュータで複雑な最適化問題を効率的に解く技術。
AI導入で加速する研究開発、業務効率化とリスク管理が鍵
今回の取り組みは、研究開発工程の効率化と精度向上という大きなメリットをもたらすだろう。
熟練者に依存せず非熟練者でも高精度な配合案を導けるため、開発スピードの加速やコスト削減が期待できそうだ。また、AIによる文献解析で新規材料発見の可能性も広がる。
一方で、AIによる予測結果はあくまで候補であるため、実験検証は不可欠である。材料特性の微細な変化や未知の相互作用を見落とすリスクは依然として残る。
加えて、AIモデルの学習に偏りがある場合、探索範囲が限定される可能性もある。
市場への影響として、開発スピードの向上は製品投入の迅速化につながり、特にプレミアムタイヤ市場での競争優位性を高める要素となり得る。迅速かつ精度の高い開発は、ブランド価値の向上やグローバル市場での差別化に寄与するだろう。
長期的には、今回のAI活用による効率化・革新性の両立モデルは、他製造業への波及効果も見込める。住友ゴムとNECの取り組みは、研究開発におけるデジタル革新の成功例として業界全体の動向に影響を与えると予想される。
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