民放連が生成AIに警鐘 無許諾学習排除と削除措置を求める声明

一般社団法人日本民間放送連盟(民放連)が生成AIの開発・学習に関する声明を発表した。米OpenAI提供の「Sora2」などから民放各社の権利保有コンテンツに酷似する映像が生成された事例を問題視し、無許諾での学習排除や生成物削除を開発者に強く要請した。
民放コンテンツ酷似映像をAIが生成 無許諾学習への問題提起
2025年11月26日に発表された声明によると、2025年9月30日から提供されている「Sora2」で生成された映像の一部が、民放連会員社が権利を保有するアニメなどの作品と同一、または類似しているという。
公開された映像はインターネット上で閲覧可能であり、事前許諾を得ない学習が行われた可能性が高いと民放連は判断している。
民放連は、公開を前提とした生成AIサービスにおける学習は「享受目的(※)」に該当し、著作権者の同意が必要と指摘。無許諾学習は著作権侵害のみならず、ブランド毀損や名誉毀損など民法上の責任にもつながると警鐘を鳴らした。
特に、違法アップロードされた素材を学習に利用した場合の影響はさらに重大で、制作文化やクリエイターの利益を大きく損ねかねないと懸念を示している。
さらに、報道番組に酷似する映像や政治家の偽動画、災害映像などが生成されれば、社会的混乱を招く恐れがあるとして、既に生成済みの類似映像については早急な削除も求めた。
声明では、無許諾学習の禁止措置、同一もしくは類似する映像・画像等の生成の防止措置、権利侵害申立てへの真摯な対応の3点を開発企業に要求している。
※享受目的:著作物を直接利用して利益や効果を得る目的。公開を前提とする生成AI学習の場合、事前許諾が必要とされる。
技術進展と権利保護の両立が鍵 透明なAI開発体制構築へ
民放連による声明は、生成AIの無許諾学習に対して明確な問題提起を行った点で意義が大きい。
著作権やブランド価値の保護を前面に押し出すことで、放送コンテンツの権利を守る姿勢を示したことは、クリエイターやメディア産業の信頼性維持に寄与する可能性がある。また、開発企業に削除や防止措置を求めたことは、AI市場における責任ある対応を促し、技術の社会受容性向上につながる契機になりうる。
一方で、開発側からは過度な規制と受け止められる余地もある。具体的な許諾方法やデータ管理プロセスが未整備のままでは、AI開発スピードが鈍化し、日本の競争力に影響を及ぼす懸念も否定できない。
さらに、生成物の「類似性」の判断基準が曖昧であるため、事業者の対応が過剰防衛に傾くリスクもあるだろう。
今後は、国内外のAI開発企業と権利者団体による協議体制構築、さらには政府主導による制度整備が進む可能性がある。透明なルールが早期に整備されれば、安全性や信頼性を担保した生成AI活用が進展し、産業競争力向上につながることも期待できる。
今回の声明は、開発企業に対応を迫るだけでなく、AIと放送業界の共存に向けた重要な判断材料となりそうだ。
一般社団法人日本民間放送連盟 生成AIの開発・学習に関する声明
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