ワーナーミュージックがSunoと提携 AI音楽生成に正規ライセンス導入へ

ワーナーミュージック・グループ(WMG)が、音楽生成AI「Suno」とのパートナーシップ締結を発表した。AI学習に正式な権利処理を導入し、対価支払いを明言する。
AI学習に正規楽曲提供 提携で著作権侵害訴訟和解へ
2025年11月25日、Sunoが発表した提携内容によれば、ワーナーミュージック・グループ(WMG)は、AIモデルの学習材料として、アーティストやソングライターが同意(=オプトイン)した氏名、画像、肖像、声、さらには楽曲データの使用を許可する。これにより、権利保有者には対価が支払われる仕組みが明確化される。
WMG所属のアーティストとソングライターは、ライセンス素材がどのように使用されるかを完全にコントロールできるようになるとのこと。
WMGは、Sunoと連携し「ライセンス型AI音楽プラットフォームの青写真を描くことに尽力していく」としている。
Sunoは2023年に公開された音楽生成AI(※)で、テキスト入力から歌声入りの楽曲を生成できる機能で注目されてきた。
しかし、2025年6月にはWMGやソニーミュージックらが著作権侵害で提訴していた経緯がある。今回のパートナーシップ締結により、この訴訟は和解に至った。
※音楽生成AI:人工知能を用いて作曲・歌唱を自動生成する技術。学習に使用する音源や声の権利処理を巡り係争が多発していた。
AI音楽の新市場形成へ 権利保護と創作拡張の両立が鍵
WMGとSunoの提携は、生成AIと音楽業界の関係性を大きく転換する動きと言える。
最大のメリットは、AI学習に正式なライセンスが導入された点であり、これまで問題視されてきた無断利用に一定の歯止めがかかることだ。アーティストが自ら使用範囲を選択できる仕組みは、権利保護と主体性確保の観点で大きな前進と捉えられる。
また、AIを創作支援ツールとして利用できる環境が整い、新たな音楽表現の開発につながる可能性があると評価できる。
一方、デメリットとしては、AI生成楽曲の類似性や権利処理の境界が依然曖昧であり、今後も係争が発生する余地を残す点が挙げられる。さらに、AIの活用が拡大するほど、創作スタイルの画一化やアーティストの独自性低下を懸念する声も増すと考えられる。
加えて、ライセンス料や利用対価が制作側のコストとして跳ね返る可能性も否定できず、業界全体の運用バランスが問われる局面が来るだろう。
今回の提携は、AI音楽市場における「合法的な学習枠組みづくり」の始まりと位置づけられる。
ただし、AI活用とアーティストの創造性維持をどう両立するかが最大の課題として残る。レーベル、AI企業、アーティストの三者が協調しながらルール形成に関与できる環境が整うかが、今後の鍵と言える。
Warner Music Group PRESS RELEASE
関連記事:
米ワーナーが生成AI「Midjourney」を提訴 著作権侵害でハリウッド大手が連携強化

ユニバーサル ミュージックとUDIO、AI音楽制作で提携 著作権訴訟を和解しライセンス契約締結

Spotify、3大レーベルとAIで提携 「アーティスト・ファースト」なAI環境整備を目指す












