Disney+がAI生成コンテンツ公式解禁へ ファン参加型UGCとIP保護を協議中

2025年11月13日、米ウォルト・ディズニーのボブ・アイガーCEOは、配信サービスDisney+で加入者がディズニーキャラクターを使ったAI生成コンテンツを制作・視聴できる機能を導入する方針を示した。
Disney+でユーザーがAI作品を制作・共有できる仕組みを検討
最新の決算報告の場でアイガー氏は「2019年のサービス開始以来、製品の観点からもテクノロジーの観点からも、これまでで最大かつ最も重要な変革の真っただ中にあります」と述べた。現在はIP保護とユーザーの創作自由度を両立させるため、AI関連企業と協議を行っている段階とされる。
アイガー氏は「もうひとつ、AIによって可能になることの中で私たちが非常に楽しみにしているのは、Disney+のユーザーに、より深く関与できるような体験を提供できるようになることです。」と語り、短編を中心とするユーザー生成動画の制作・視聴機能が検討対象になっていると説明した。
これが実現すれば、ファンが自作したキャラクター動画を公式の仕組みの中で安全に共有できるようになり、従来の視聴中心のプラットフォームから、参加型のコミュニティへと進化する可能性が高い。
背景には、生成AIによる無許可のキャラクター動画が急増している現状がある。1カ月前にはOpenAIの動画生成アプリ「Sora 2」が公開され、マリオやピカチュウがライトセーバーを持つ動画など、ライセンス作品の二次創作がSNS上に大量投稿された。こうした状況は著作権上のリスクをはらむものだが、ディズニーは一定の条件下で公式にUGCを認める方向に舵を切りつつあると言える。
公式UGC化の波紋 創作自由とIP保護の両立が焦点に
ディズニーがAI生成コンテンツを公式に認めれば、ファンコミュニティに大きな変化が生じると予測される。まずメリットとして、正規のライセンス環境で二次創作が行えるようになり、クリエイターは著作権侵害を気にせず作品を投稿できるようになる点が挙げられる。UGC活性化はDisney+の利用時間拡大や顧客維持にも寄与し、プラットフォーム全体の競争力向上につながる可能性がある。
一方で、リスク管理の難易度は上がる。AI生成物には誤情報や不適切表現が混在する恐れがあるため、品質基準や投稿ガイドラインの整備が不可欠になる。とりわけディズニーのキャラクターは世界的なブランド力を持つため、ブランド毀損への対策は慎重に進める必要がありそうだ。また、任天堂が「当社のIPを侵害していると判断したものについては、適切な対応をとる方針」と表明しているように、他社IPとの境界線が曖昧になる懸念も残る。
それでも、公式プラットフォーム内でのUGC解禁は、エンタメ企業が著作権管理とファン創作の新たなバランスを模索する動きとして注目される。AIが創作行為の中心に入る時代において、ディズニーがどのような制度設計を示すかが、今後の業界標準を左右する可能性がある。
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