NTTドコモ、AIが“同席”する会議支援エージェントを開発　リアルタイム発言で意思決定を促進

2025年11月10日、NTTドコモはAIエージェントが人間と同じように会議へ参加し、発言や提案を行う「会議支援エージェントシステム」を開発したと発表した。リアルタイム分析と発話によって、会議の生産性と創造性の向上を目指す。

ドコモ、複数AIが役割分担し会議を支援　上司不在でも意思決定可能に

NTTドコモが開発した「会議支援エージェントシステム」は、AIが参加者として会議に加わり、発言・提案・分析を通じて議論を支援する仕組みである。
従来のAI議事録生成や要約機能を超え、リアルタイムでの意思決定や創造的議論を促す点が特長とされている。

本システムは、ドコモ独自の「音声コミュニケーション技術」、「マルチエージェント技術」、「代理エージェント技術」の三つを統合し、人間の発言や資料内容を理解した上で最適なタイミングで発言を行う。
発話はEQ（心の知能指数）を意識した自然な対話を重視しており、人間中心のインタラクションを目指している。

また、複数のエージェントがそれぞれ異なる役割を担い、会議内容に応じて協調的に動作する。たとえば、情報収集エージェントが社内データベースから必要資料を即座に提示する一方で、提案型エージェントが新たな視点を示すといった連携が可能となる。

さらに「代理エージェント」によって、不在の上司や専門家の知見を再現し、意見を会議中に代弁できる。この機能により、承認作業の手間や専門家への個別相談の負担を軽減することも可能だ。

ドコモは今年度中に社内導入を開始し、将来的にはパートナー企業との実証や商用展開を視野に入れている。
今後は会議のデジタルトランスフォーメーション（DX）を推進し、AIによる自然なコミュニケーションの社会実装を目指す方針である。

AIが意思決定を補完する時代へ　効率化の裏に人間の創造性課題も

AIが会議の参加者として発言する仕組みは、組織の生産性を大きく変える可能性がある。
議論の停滞を防ぎ、適切な情報を瞬時に提示できるため、意思決定の迅速化や議論の質向上が期待できる。
特に多拠点組織やグローバル企業にとって、リアルタイム支援の効果は大きいとみられる。

ただし、AIが会話の主導権を握る場面が増えれば、参加者の主体的な発想や議論の多様性が損なわれるリスクもある。AIがあえて反論を避けるような対応をすれば、結果としてイノベーションの芽を摘みかねない。

また、代理エージェントが上司の判断を代替することは、組織の承認フローを効率化する一方で、「誰が最終責任を負うのか」という倫理的課題を伴う。判断の透明性を保つための設計が不可欠となるだろう。

今後は、AIが人間の思考を補助する存在として共進化していく方向性が重要になると考えられる。
ドコモの取り組みは、オフィスDX（デジタルトランスフォーメーション）の一端を担うが、真の価値はAIと人間の協働が「発想の拡張」を生み出すかどうかにかかっていると言える。

株式会社NTTドコモ プレスリリース

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