シャープ、鴻海とAIサーバー事業で協業へ　亀山第2工場をAI拠点に再生

2025年11月10日、シャープは親会社の鴻海精密工業と連携し、三重県亀山市の亀山第2工場で人工知能（AI）向けサーバーを生産する計画を発表した。2027年度の事業参入を目指し、国内市場向けの供給体制を構築する方針だ。

シャープ、亀山第2工場を活用しAIサーバー生産へ

シャープは10日、鴻海精密工業が取得予定の亀山第2工場（三重県亀山市）でAIサーバーを共同生産する計画を明らかにした。2027年度の稼働を目指し、鴻海が製造、シャープが販売を担う方向で協議を進めている。国内市場を主なターゲットとし、生成AI需要の高まりに対応する。

同工場はかつて液晶テレビ「世界の亀山モデル」を生産していた拠点であり、2026年8月をめどに鴻海へ売却される予定だ。沖津雅浩社長は「売り先を共に開拓する形で検討している。27年の生産開始を想定している」と述べ、液晶パネルの生産も継続すると説明し、AI向けデータセンターの建設が国内で相次ぐ。

また同日発表された2025年9月中間連結決算では、売上高が前年同期比13.3％減の9503億円に落ち込んだ一方、純利益は98.1％増の454億円を計上。パソコンの買い替え需要やコスト削減が利益を押し上げた。通期の純利益見通しも530億円へと上方修正した。

AIサーバー事業が開く再生の道　国内回帰と国際競争のはざまで

シャープと鴻海の協業は、国内生産によるAIサーバー供給網の確立を目指す取り組みであり、地政学リスクの高まりを背景に広がる「製造の国内回帰」の流れの一例とみられる。
生成AIの利用拡大に伴い、学習や推論処理を支える高性能サーバーの需要は拡大傾向が続くとみられ、国内での生産体制強化が注目されている。

国内製造によって納期の安定や供給リスクの分散が図られ、安全保障の観点からも一定の効果が期待される。こうした動きは、産業基盤の強靭化やAIインフラの自立性向上に寄与する可能性がある。

一方で、AIサーバー市場は依然としてエヌビディアやデル、レノボなど海外勢が主導しており、価格・性能の両面で競争の厳しさを増している。
主要部品であるGPUなどは海外調達に大きく依存しており、短期的にはコスト構造の最適化が課題として残る。さらに、AI計算による電力消費の増大や環境負荷への対応も避けて通れないテーマだ。

それでも、鴻海の量産力とシャープの販売網を組み合わせることにより、日本発のAIサーバー供給体制が形成される可能性は十分にある。国内の技術企業やクラウド事業者との連携が進めば、部品やソフトウェアを含むエコシステムの育成にもつながり得るだろう。

液晶からAIへと軸足を移すシャープの取り組みは、製造業再生の新たな事例として注目される可能性がある。

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