テスラ、独自AIチップ工場を構想 インテルとの提携を示唆し自動運転強化へ

2025年11月6日、米電気自動車(EV)大手テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)は、AI(人工知能)半導体を製造するための「巨大チップ工場」建設の必要性について発言した。年次株主総会の場で、インテルとの提携の可能性にも言及した。
テスラ、第5世代AIチップ開発を加速 自社生産体制を視野に
テスラは自動運転技術の中核を担うAIチップの開発を進めており、マスク氏は今後「巨大なチップ工場」を建設しなければならなくなると述べた。
これは、同社が設計する第5世代AIチップ「AI5」の量産体制を確立する構想の一環である。
現在テスラが使用しているのは第4世代チップで、AI5ではさらに高い処理能力と電力効率の両立を目指す。
マスク氏はSNS「X」で、AI5は2026年に少量生産し、大量生産が実現するのは2027年であると明らかにした。
AI5はエヌビディアの最新GPU「ブラックウェル」の3分の1の消費電力で稼働し、製造コストは約10%に抑えられる見通しだという。
また、マスク氏は総会で「もしかしたらインテルと何かやるかもしれない。まだ契約は結んでいないが、インテルと話し合う価値はあるだろう」と発言し、半導体製造の外部パートナーとしてインテルを選択肢に挙げた。これを受け、インテル株は時間外取引で約4%上昇した。
インテル側はコメントを控えている。
EVとAIの垣根を超える戦略 チップ内製化が競争力を左右
テスラがAIチップの内製化を進める最大のメリットは、自動運転技術の要となる演算処理を自社で最適化できる点にあると考えられる。ハードとソフトを統合することで、学習効率や安全性能の向上を迅速に実現できそうだ。
さらに、外部サプライヤーへの依存度を下げることで、供給リスクの低減とコスト構造の柔軟化が可能になるだろう。AI5がエヌビディア製GPUよりも低消費電力・低コストであるとすれば、長期的な競争優位を築く基盤となり得る。
一方で、半導体工場の建設には数百億ドル規模の投資が必要となるため、短期的には財務負担の増加が避けられないはずだ。
AI半導体市場ではエヌビディアが圧倒的な地位を占めているため、テスラが独自路線でどこまで性能差を縮められるかが、今後の焦点となるだろう。インテルとの提携がどのような形で具体化するか、引き続き注目したい。
もしインテルとの提携が具現化すれば、テスラのAIチップ戦略は自動車業界を超えて半導体産業全体にも影響を及ぼす可能性がある。
テスラのチップ戦略は「EVメーカー」から「AIプラットフォーマー」への転換を目指す試みと見ることもできそうだ。
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