AIと学生が生む地方創生の新発想　長岡技科大で実践授業、「雪かきを雪フェスにする」アイデアも

2025年10月31日、新潟県長岡市の長岡技術科学大学で、AIを活用して地域課題の解決策を考える特別授業が行われた。学生たちは「雪かきを雪フェスに変える」など独自のアイデアを次々と提示し、テクノロジーと創造力による地方創生の可能性を探った。

長岡技科大でAI実践授業　学生が「雪かきを雪フェスに」など地域活性化策を提案

長岡技術科学大学は、新潟市に本社を置くシステム開発会社・BSNアイネットと共同で、AIを用いた地域課題解決をテーマとする特別授業を実施した。
産学連携の一環として行われたこの授業では、同大学の副学長・湯川高志教授の監修のもと、BSNアイネット技術開発部の島宗幸嗣氏が講師を務めた。

島宗氏は、人口減少や高齢化、空き家増加、医師不足といった新潟県が抱える構造的な課題を挙げ、同社が推進するAIの社会実装事例を紹介。職人技の継承を支援するデジタル実証実験や、AIを活用したケアプラン（※）作成支援システムなど、地域密着型の取り組みを解説した。

授業では約60人の学生がメッセンジャーアプリを使い、さまざまなアイデアを投稿。「雪かきを雪フェスに変える」「空き家を病院に改装して医師に貸し出す」「シャッターアート」など、地域の課題を創造的に変換する発想が続出した。
これらの提案は、今後2週間かけて生成AIを活用しながら企画書にまとめられる予定である。

島宗氏は学生に対し、常識というバイアスを外し、自分の思考の外に出るよう助言した。

※ケアプラン：介護保険制度に基づき、要介護者が受けるサービス内容や頻度を定める計画書のこと。通常は介護支援専門員（ケアマネジャー）が作成する。

AIが地方創生を変えるか　創造的人材育成の期待と課題

今回の授業は、AIを教育現場に取り入れることで、地域課題へのアプローチそのものを再定義する試みといえる。最大のメリットは、若い世代がテクノロジーを活用して「地域を外から眺め直す」視点を得られる点にある。雪や空き家など、これまでマイナスとされてきた要素を資源に変える発想は、地域の可能性を再発見する契機となる。

また、地方大学が企業と連携することで、実社会と教育の距離が縮まり、学生の学びが即戦力へと結びつくことも期待される。AIの使い方を“正解探索”ではなく“創造の補助輪”として学ぶことは、今後の人材育成において極めて重要だろう。

一方で、課題も少なくない。アイデアを実装に移すには、自治体や地域企業の協働体制、資金やデータ環境の整備が不可欠である。AIを使った企画が持続的に地域へ定着するには、単発の授業にとどまらない仕組み作りが求められる。

それでも、学生の自由な発想とAI技術を組み合わせる今回の試みは、地方創生の新しいモデルケースになり得る。