OBC、AIで連結会計を自動化 属人業務を代行する「奉行AIエージェント」発売

2025年10月29日、オービックビジネスコンサルタント(OBC)は、AIが連結会計業務を支援・代行する「奉行AIエージェント 連結会計支援クラウド」を2025年11月10日に発売開始を発表した。複雑で属人化しやすい連結会計をAIが担うことで、企業グループ全体の決算プロセスを効率化する狙いだ。
OBC、AIでグループ決算を自動化 業務負担を大幅軽減へ
OBCは、AIによる次世代業務支援サービス「奉行AIエージェントシリーズ」の第二弾として、連結会計業務を自動化するクラウドサービスを発表した。連結会計は、グループ各社の会計データを収集・照合・合算し、内部取引を消去して財務諸表を作成する高度な業務である。担当者の熟練度や判断力に依存しやすく、属人化が進む領域として知られている。
同社によると、新サービス「奉行AIエージェント 連結会計支援クラウド」では、AIが個社データの収集から内部取引の突合、差額原因の特定、消去仕訳の起票までを一貫して支援・代行する。AIが取引明細を自動で照合し、差異の原因を可視化することで、従来手作業で行っていた確認作業を大幅に削減できるという。
また、同サービスはOBCの「勘定奉行クラウド」との連携に加え、他社システムの会計データも取り込み可能。海外法人への対応も今後予定している。OBCはこのリリースを通じて、SaaS型ERP「奉行V ERPクラウド」の販売を強化し、2027年度までに約30億円の売上を目指すとしている。
※連結会計:複数の子会社・関連会社を持つ企業グループが、全体の財務状況を明らかにするため、親会社と子会社の会計データを統合して作成する会計手続き。
AI経理が拓く業務改革 精度向上への期待と新たな管理課題
AIによる連結会計支援は、属人化の軽減や生産性向上に寄与する可能性がある。特に、担当者の経験差に左右されやすかった処理品質を、AIの支援によって一定水準に保てる点は注目される。
データ突合や仕訳の自動処理が進むことで、人的ミスの抑制や決算スピードの改善が期待されており、経理担当者の業務範囲もより分析・経営支援寄りへとシフトすることが見込まれる。
一方で、AI導入にはリスクも伴う。AIの誤学習による判断ミスや、データの正確性への過度な依存が課題となり得る。また、AIの処理プロセスが不透明な場合、内部統制や監査の観点で新たな管理責任が生じる懸念もある。
さらに、グループ企業間でデータ連携が広がるにつれ、情報セキュリティ対策の重要性は一層高まるだろう。
今後は、AIが会計業務の一部を担う動きが広がり、企業のガバナンスや会計透明性を高める方向に進化していく可能性がある。
OBCの今回の取り組みは、企業会計の実務におけるAI活用拡大の流れを示す一例といえる。
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