ポーラ・オルビスHD、AIテスト自動化で開発効率化 MagicPod導入で「品質を守る文化」に転換

2025年10月31日、株式会社ポーラ・オルビスホールディングス(東京都中央区)は、AIテスト自動化プラットフォーム「MagicPod」を導入したと発表した。スプリントごとに最大4時間発生していた手動テスト工数をゼロにし、開発チームの意識改革と品質文化の定着を実現したという。
手動テストを完全削減 スモールスタートで開発文化を刷新
ポーラ・オルビスホールディングスは、化粧品ブランド「ポーラ」や「オルビス」を展開する大手ビューティー企業グループである。
同社は、開発プロジェクトごとに手動テストが増大し、作業の形骸化が進んでいたことを課題として抱えていた。これを解消するため、AIを活用したテスト自動化プラットフォーム「MagicPod」を導入した。
MagicPodは、実行回数無制限の料金体系とノーコードによる操作性が特徴で、専門知識を必要とせずにテスト自動化を実現できる。
ポーラ・オルビスではスモールスタートの方針で導入を進め、スプリント(※)ごとに最大4時間を要していた手動テスト工数をゼロに削減したとのことだ。
グループデジタルソリューションセンターの早川氏は、「システム開発はもともと外部ベンダーに委託していましたが、市場の急速な変化に柔軟かつタイムリーに対応するため2023年1月に開発チームを内製化し、ITプロダクト開発チームとして発足しました。そして将来の開発スピードがテスト工数によって低下してしまうという懸念があり、早い段階でのテスト自動化導入を決断しました。」と述べた。
また、スクラムマスターの川田氏は「MagicPodの導入によって、テストが「やらなければならない作業」から「品質を守るための重要なプロセス」という認識に変わりました。」と語る。
MagicPodは現在、AIによる自動修正やクラウド実行環境を備え、国内外500社以上が導入している。テストの属人化を防ぎ、開発スピードを維持しながら品質保証を持続可能にする仕組みを支援している。
※スプリント:ソフトウェア開発で使われる短期間の作業単位のこと。通常1~4週間で設定され、計画・実装・テスト・振り返りを繰り返すことで、迅速な改善と価値提供を実現する手法を指す。
AIによる効率化が示す方向性 品質維持と開発文化の両立へ
今回の導入は、AIを活用した業務効率化の成功事例としても象徴的だ。
ポーラ・オルビスが特徴的なのは、単なる省力化ではなく、開発チーム全体の意識を変えることに重点を置いた点だろう。自動テストの定着により、手作業の削減だけでなく、品質基準の統一や開発スプリントごとの再現性向上といった副次的効果も生まれていると考えられる。
他方で、AIテストの導入には初期設定やシナリオ設計の難易度など課題も残る。すべての工程を自動化できるわけではないと思われるため、チーム内での継続的な改善サイクルは不可欠だろう。
今後は、AIを基盤とする自動化の流れが製造・物流・金融など他業界にも広がる可能性が高い。
ポーラ・オルビスの、AIを「人の代替」としてではなく、「品質を守るパートナー」として位置づけた事例は、他社にも大きな示唆を与えそうだ。
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