NRI、「AI共創モデル」をGoogle Cloudに拡大 業務特化エージェント開発へ

2025年10月29日、野村総合研究所(NRI)は、企業の生成AI活用を支援する「AI共創モデル」をGoogle Cloudにも対応させたと発表した。Vertex AIやGemini Enterpriseを活用し、業種特化型AIエージェントの開発体制を整備。日本国内企業のAI導入加速を狙う取り組みだ。
NRI、Google Cloud連携で生成AI共創モデル拡大
NRIは、2025年6月に開始した「AI共創モデル」をGoogle Cloudにも拡大し、マルチクラウド対応を本格化させる。Google Cloudの統合AI開発基盤「Vertex AI」と、法人向け生成AIプラットフォーム「Gemini Enterprise」を活用し、業種・業務特化のAIエージェントを開発する方針である。
同モデルは、企業が直面する人材不足や業務プロセス設計の難しさといった課題に対応する取り組みとして構築され、NRIのコンサルティング力とシステム開発力に、クラウドベンダーとAIパートナー企業の技術力を掛け合わせる枠組みとなっている。
今回の拡大では、Google Cloudの知見を持つAI開発企業Recursiveと新たに連携し、業務適合度の高いソリューション提供に挑む。
具体的には、Google Cloud上でリファレンスアーキテクチャを整備し、企業が安心してAIを導入・運用できる環境を提供。まずは旅行者支援や金融向けマーケティングなどの領域でAIエージェントを展開し、今後順次対象を広げる計画だ。
さらに、NRI社内でもGeminiやNotebookLMを活用し実践的なナレッジを蓄積。3年間で100件のプロジェクト創出と500人規模のAI技術者育成を目標としている。
業務特化AIが競争力左右へ 人材育成とガバナンスが鍵
NRIの取り組みは、企業が生成AIを本格導入するフェーズへ移行している現状を反映するものだ。業務特化型エージェントを早期に整備できれば、AI活用の成功率は高まるとみられる。実際、コンサルティングと開発力を併せ持つNRIとクラウドベンダーの協働は、導入スピードと品質の両立につながる可能性がある。
一方で、AI導入にはリスクも存在する。業務領域に深く踏み込むほどデータガバナンスや説明可能性が求められ、社内人材のAI理解度が成果を左右する。特に多様な業界を対象とする今回の枠組みでは、ユースケースの精度と継続的な運用支援が重要だろう。
企業にとっては単なるツール導入ではなく、業務プロセス変革とスキル育成を同時に進める必要があるとみられる。NRIが掲げる技術者育成計画は、その需要を見据えた動きと言える。
今後、他のSaaSやクラウドとの連携も進めば、企業のAI戦略は一段と複雑になるが、先行して知見を蓄積する企業が優位性を持つだろう。
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