高校生がAI活用の最前線を体感 「やまがたAI部」が日興証券を訪問

2025年10月27日、人工知能(AI)を学ぶ「やまがたAI部」の高校生が、東京都のSMBC日興証券をオンラインで訪問した。同社のAI活用による業務効率化や人件費削減の成果を学び、AIが働き方をどう変えるかを実感する機会となった。
日興証券、AI活用で月2000万円超の人件費削減 高校生が実例を学ぶ
「やまがたAI部」は、山形県内の企業や大学が連携して2020年に立ち上げた高校生向けAI教育プロジェクトである。発足5年目の今年は、山形県内16校約70人に加え、東京都や京都府など県外7都府県からも67人が参加しており、活動の輪を全国に広げている。
やまがたAI部では、自らの研究に生かすため年5回の企業訪問を実施。27日は山形県内4校の計29人が参加し、東京都に本社を置くSMBC日興証券をオンラインで訪問した。
同社では、資料作成や翻訳、企画提案といった業務の多くをAIが担っている。独自のAIツールを導入した結果、作業時間が短縮され、月あたり2000万円以上の人件費削減効果を実現したという。
また、社員向けのAIリテラシー教育の一環として「偉人なりきりAI」も展開。織田信長や夏目漱石など歴史上の人物の人格で回答する対話型AIが、社員の質問や相談に応じる仕組みだ。
高校生からは「金融機関がAIを活用しているのが意外でした」「探究活動に生かしていきたい」との声が上がった。AI部は今後も企業訪問を重ね、12月には山形県新庄市での現地研修を予定している。
AI教育が広げる地方の可能性 企業連携が次世代育成の鍵に
今回のオンライン訪問は、地方の高校生が都市部の大手企業のAI活用現場を直接知る貴重な機会となっただろう。AI部のように地域発で産業界と結びつく教育モデルは、地方から次世代のデジタル人材を育てる新たな枠組みとして注目できる。
最大のメリットは、実際のAI導入事例を通じて、生徒が社会での課題解決のプロセスを体感できる点にある。単なる技術理解にとどまらず、AIがもたらす経済効果や職業構造の変化を現実的に学べることは、キャリア教育としても意義深い。
一方で、地方ではAI教育を支える専門人材の不足や、実践的な学習環境の整備が課題として残ると考えられる。都市部企業との交流を継続的に行う仕組みをどう維持するかが今後の焦点となりうる。
AIが企業経営の中枢に入りつつある今、教育現場がこの潮流をどう取り込み、地方創生と結びつけていくかが問われている。やまがたAI部の試みは、AI時代における地域教育のモデルケースとなる可能性がある。
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