博報堂ら、「Human-Verified Ad Network」実証 World IDでアドフラウド対策

2025年10月14日、博報堂はLG電子およびTools for Humanityと共同で、人間にのみ広告を配信する「Human-Verified Ad Network」の実証実験を実施した。
AIによる不正広告閲覧(アドフラウド)を排除し、透明性の高い広告配信モデルを構築する試みだ。
博報堂、AI時代の広告信頼性を高める実証実験を実施
株式会社博報堂は、LG電子およびTools for Humanityと連携し、AI時代における広告配信の信頼性確保を目的とした「Human-Verified Ad Network」の実証実験を実施した。
2025年7月から8月にかけて実施された同実験では、博報堂が開発したミニアプリ「boba」を通じ、World IDによる人間認証とLG電子のWeb3基盤広告ネットワーク「Web3 Ad Network」を活用。
広告の閲覧履歴をブロックチェーン上に記録し、ボットによる不正閲覧を排除することで、人間による閲覧のみを対象とする仕組みを検証した。
結果として、従来型のWeb2広告と比較してクリック率(CTR)が約50%上昇し、直帰率も15ポイント改善した。
また、インセンティブ機能「Watch to Earn」によるエンゲージメント向上も確認され、クリック率は最大7倍に向上した。
これらの成果は、アドフラウド(※)抑制とユーザー体験改善の両立を示すものとなった。
さらに博報堂は、博報堂DYグループのAI推進プロジェクト「HCAI Initiative」の一環として、本ネットワークの事業化に向けた検討を進めている。
※アドフラウド:広告配信における不正行為の総称。ボットやスクリプトを用いて虚偽のクリック・閲覧を発生させ、広告費を不正に搾取する行為を指す。
人間中心の広告エコシステムへ 透明性とプライバシー両立の鍵に
今回の実証は、AI生成トラフィックの増加によって深刻化するアドフラウド問題に対し、業界が直面する新たな解決策を提示したと言える。
World IDを通じた「人間証明」により、広告費の無駄を抑えつつ信頼性を確保する試みは、今後のWeb3広告基盤のモデルケースとなる可能性がある。
さらに本実証実験では、ユーザーが自らのデータ提供範囲を制御できる「自己主権型データ」設計であったため、GDPRや改正個人情報保護法などの国際的規制強化にも対応可能であると考えられる。
匿名性を保持したまま広告効果を計測できる点は、プライバシー保護とマーケティング精度の両立を図る上で重要な進展といえる。
AIが生成する膨大なトラフィックの中で「人間性の証明」を軸にした広告配信モデルが定着すれば、デジタル広告産業の信頼構築に大きな一歩を刻むことになるだろう。
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