AIデマンド交通「ごしょくる」始動へ 高齢化地域の移動課題に挑む五所川原市

2025年9月26日、青森県五所川原市でAIを活用したデマンド交通「ごしょくる」の試験運行が始まった。本格運行は10月1日から開始予定で、従来のバスやタクシーより柔軟かつ効率的な移動手段として注目される。
市内160カ所を結ぶ新交通 AIが配車を最適化
五所川原市は10月1日から、AIデマンド交通(※)「ごしょくる」を正式に運行する。
その前段として9月26日にショッピングセンターELM(エルム)で運行開始式を実施し、同日から試験運行がスタートした。
「ごしょくる」は、利用者の予約に応じてAIが最適なルートを算出し、乗降場所まで配車する仕組みを採用している。予約は電話や市公式LINEから受け付け、市内のバス停や公共施設など約160カ所で利用できる。
導入される車両は9人乗りワゴン2台で、複数人の移動需要を効率的に組み合わせることで利便性を高める。
市は春以降、循環バスを運営する事業者が人員不足により継続困難となったことを背景に、新たな交通インフラの必要性を強く認識していた。
佐々木孝昌市長は「AIデマンドによる交通がこれから主流になっていくだろう」と語り、ごしょくるが市民に愛される存在になることを期待しているようだ。
利用者の反応も上々だ。
26日に最初に乗車した市民は「私しょっちゅうELMに買い物に来ていますから」と話し、日常の移動手段としての期待をにじませた。
本格運行後は小学生以上が一律300円、ELM発着に限り200円で利用できる。
支払い方法は、現金またはキャッシュレス決済としている。
参考:五所川原市AIデマンド交通「ごしょくる」
https://www.city.goshogawara.lg.jp/kurashi/machi/2025-0825-1032-717.html
※AIデマンド交通:利用者の予約情報をもとにAIが最適なルートや車両配車を決定する交通システム。効率的な運行が可能で、路線型バスの代替や補完として注目されている。
持続可能な地域交通へ 利便性と課題を考察
AIデマンド交通の導入は、高齢化と人口減少が進む地方都市において持続可能な移動サービスを確保する試みである。
特に、五所川原市のように従来型のバス運行が人材不足で困難化する状況では、AIが運行計画を担う仕組みは柔軟性と効率性の両立につながり得る。
利用者にとっても、従来の路線バスよりも自宅や目的地に近い場所から乗降できる点は大きな利点だろう。運賃も明確で低価格に設定されていることから、生活の足として定着する可能性は高いと考えられる。
さらに、配車の最適化により車両の稼働効率が高まれば、環境負荷の軽減にも寄与するだろう。
一方で、試験段階では車両が2台のみであり、需要が集中する時間帯に十分対応できるかは不透明だ。高齢者を中心とした利用者層が、LINEや電話予約を円滑に行えるかという課題も残りそうだ。
また、安定的な運行体制を維持するためには市の財政支援や民間事業者との連携が不可欠となるだろう。
「ごしょくる」が市民に浸透すれば、地方都市における公共交通の新たなモデルとなる可能性は高い。特に全国的にバス・タクシー事業者の人材不足が進む中、AIデマンド交通は既存の仕組みを補完しうる現実的な選択肢となるだろう。
将来的に国レベルでの支援策や制度整備が進めば、五所川原市の事例は、持続可能な地域交通の方向性を示す一例になるのではないだろうか。
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