青山商事が「PayPay給与受取」導入 キャッシュレス普及に応じた新たな選択肢

2025年9月25日、青山商事株式会社(本社:広島県福山市)は、PayPayが提供する給与デジタル払いサービス「PayPay給与受取」を10月支給分から導入すると発表した。
国内企業の給与支給の多様化を象徴する動きとして注目される。
全従業員対象に給与の一部をPayPayで受取可能に
青山商事は2025年10月より「PayPay給与受取」を本格導入し、希望する従業員が給与の一部をPayPayアカウントで受け取れるようにする。対象はパートタイマーを含む全従業員4,892名(2025年3月期時点)であり、世代や雇用形態を問わず柔軟な給与受け取りを可能にした。
従業員は既存の銀行口座とPayPayアカウントを併用でき、日常の支払いや送金、家計管理に合わせた活用が期待されている。
この決定の背景には、急速に広がるキャッシュレス決済の利用状況がある。
2023年4月の労働基準法施行規則改正により、企業は給与のデジタル払い(※)を実施できるようになった。青山商事でも従業員からの要望を受けていたといい、社会的潮流と現場のニーズが合致したかたちで導入が実現した。
同社の新経営体制では「人的資本経営の推進」を掲げており、従業員が自らのライフスタイルに沿った働き方や金銭管理を選択できる環境づくりを進めている。
今回の導入はその一環として位置づけられ、従業員の利便性向上に加え、企業へのエンゲージメント強化も狙っていると言える。
※給与デジタル払い:労働者が希望した場合に、企業が給与の一部または全部を資金移動業者などの口座に振り込む仕組み。2023年の規則改正により解禁された。
給与デジタル払いが広げる選択肢 利便性と制度面の課題
給与をPayPayで受け取れる仕組みは、利用者にとって即時性と利便性をもたらす。
給与を受け取った瞬間から買い物や送金に利用でき、特にデジタルネイティブ世代にとっては生活スタイルに直結する利点が大きい。加えて、銀行口座との併用が可能なため、資金の分散管理や日常的なキャッシュレス消費をスムーズに行えるという強みもある。
一方で、デジタル払いの普及には慎重な見方もある。
給与は生活基盤である以上、デジタル払いの安全性や利用者保護に不安が残る。金融機関を介さない受け取りは、トラブル時の対応や資金管理の透明性に課題を抱える可能性が考えられる。また、利用可能なサービスが限定されるため、銀行口座と併用せざるを得ないケースも多いと予測される。
今回の取り組みは、給与支給の多様化を象徴する事例として他社にも波及する余地がある。
特に人材獲得競争が激化する中で、給与受け取りの柔軟性は企業選択の新たな評価軸となり得るだろう。
今後は、キャッシュレス決済サービスを給与インフラに組み込む企業が増加し、金融と労働市場の関係性に変化をもたらす可能性がある。
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