コニカミノルタと東京都教育庁の連携サービス「都立AI」が知事賞を受賞

2025年8月1日、コニカミノルタジャパンは、東京都教育庁と連携して展開する生成AIサービス「都立AI」が、都庁DXアワード2025のサービス部門において最優秀賞である「知事賞」を受賞したと発表した。国内の初等中等教育におけるAI導入の先進事例として注目が集まっている。
全都立256校にAI導入、国内最大規模に
「都立AI」は、生成AIを学校教育に活用する取り組みとして、2025年5月より全都立学校256校での本格導入が始まった。対象は児童生徒と教職員あわせて約16万人にのぼり、初等中等教育における国内最大規模のAI導入事例とされる。
本サービスは、最新の生成AI技術に対応した環境を整え、高速かつ低コストでの応答が可能な仕様となっている。提供元のコニカミノルタジャパンによれば、GPT-4o-mini(※)以上のモデルに準拠し、教育現場での安全かつ効率的な活用を実現しているという。
児童生徒のAI活用による能力育成と、教職員の業務負担軽減を両立させる設計が特徴で、不適切な内容を排除するフィルタリング機能や、入力内容がAI学習に使用されない仕組みも備えている。
今回の知事賞受賞は、生成AIの社会実装と教育分野での活用を推進するモデルケースとして、その先進性と社会的意義が高く評価された結果といえる。
生成AI研究校では、生徒が受験志願書をAIとともに作成することで、面接練習時間の確保が可能となり、教員1人あたり年間約60時間の添削業務を対面指導へと転換できた。
また、特別支援学校では画像生成AIを使った自己表現の機会を提供したり、歴史授業において「歴史のIF(もしも)」をテーマに議論を深めるなど、学習内容の広がりも見られたという。
これらの成果を受けて、コニカミノルタジャパンは実践知を「生成AI活用 実践アイデア集」としてまとめ、教育委員会や学校に無償提供している。
※GPT-4o-mini:OpenAIが提供する軽量高速版の大規模言語モデル。高い応答性能を維持しつつ、コストと処理負荷を抑えた仕様。教育や業務用途にも適している。
教育現場の変革が加速 創造性と効率性を両立へ
「都立AI」の全校展開は、公教育におけるAI活用の先駆けとして大きな意義を持つ。生成AIを活用することで、教員の業務効率を向上させつつ、生徒の創造力や表現力を引き出す教育が可能となる点は大きなメリットだ。とくに、マンパワーに限りのある現場では、AIが補助的役割を果たすことで、指導の質を維持・向上させることが期待される。
一方で、過度な依存や学習の形骸化といった懸念もある。生成AIが提供する情報の正確性や、生徒の主体的思考を損なわない設計が求められる。また、教員がAIをどう使いこなすかというスキル格差も課題として浮上する可能性がある。
現時点では、AIはあくまで“補助”であり、教育の本質を担うのは人間であるという原則を見失ってはならない。今後、全国の自治体がこの動きを参考に導入を進める場合、実証に基づいた段階的な展開と、現場の声を反映した設計が不可欠になると考えられる。
東京都の試みは、教育DXの有効なケーススタディとして注目される一方で、その成功は運用体制と倫理的配慮にかかっているとも言えるだろう。