テスラがサムスンと165億ドル契約 次世代AI半導体を米工場で製造へ

2025年7月28日、米テスラのイーロン・マスクCEOは、韓国サムスン電子と165億ドル規模の半導体供給契約を締結したと明らかにした。米国の新工場で次世代AIチップを生産する構想が進んでいる。
次世代AI6チップをテイラー工場で量産 契約先をテスラと正式表明
テスラのイーロン・マスクCEOは、自身のSNS「X」でサムスン電子と新たな半導体契約を結んだと投稿し、165億ドル規模の供給契約が成立したことを公表した。
対象となるのは「AI6」と呼ばれる次世代半導体で、製造拠点は米テキサス州テイラーにあるサムスンの最新工場となる。
サムスン側は7月26日に「ある大手グローバル企業との165億ドル契約を結んだ」と発表していたが、今回のマスク氏の投稿により、契約相手がテスラであることが明確になった。
契約には生産効率の最大化も盛り込まれており、マスク氏は「進捗加速のため現場に赴く」とコメントしている。
この契約により、赤字が続いていたサムスンの半導体受託生産(ファウンドリ※)事業は新たな成長機会を得た格好となる。契約報道を受け、同社の株価は一時6.8%上昇し、昨年9月以来の高値を記録した。
一方で、韓国証券各社のアナリストもサムスンの業績改善に期待感を示している。キウム証券の試算では、ファウンドリ事業は2025年上半期だけで5兆ウォン(約36億ドル)の赤字を計上しており、今回の案件がその補填に寄与すると予測している。
量産時期については未定であるが、マスク氏は以前「AI5」を2026年末に生産するとしており、「AI6」はそれ以降となる見込みだ。SK証券のイ・ドンジュ氏は、生産は2027年から2028年になると予想している。
※半導体受託生産(ファウンドリ):他社設計の半導体を製造する事業形態。サムスンやTSMCが主要プレイヤーとして知られる。
AI半導体契約がもたらす成長期待とリスク
今回の165億ドルの契約は、テスラにとって、AI半導体の設計から製造まで一貫体制を強化する重要な一歩となるだろう。エネルギー効率や演算性能が飛躍的に向上する「AI6」は、自動運転や生成AIの中核として期待できる。
サムスンにとっては、長期間続いたファウンドリ事業の赤字から脱却できる可能性が大きい。特に米テキサス州テイラーの新工場はこれまで十分な顧客を得られず稼働率が低かったため、テスラの大口契約は経営改善の追い風となり得る。
一方で、量産開始の遅延リスクや技術的な課題も存在すると考えられる。過去のマスク氏のコメントを踏まえても、目標達成に遅れが生じる可能性は否定できない。
また、競合する台湾TSMCや韓国SKハイニックスとの激しいAI半導体市場の競争は、サムスンのさらなる技術革新を求める圧力を高める可能性がある。
今後は両社が製造効率最大化に注力し、量産体制の早期整備やコスト削減を行えるかが鍵になるだろう。これらが成功すれば、AI半導体分野での競争優位性を確立し、世界的な需要増にも対応できるかもしれない。