TSMCのアリゾナ工場、台湾製チップより最大2割高と明かす AMDが供給コストに初言及

2025年7月23日、米AMDのリサ・スーCEOは、TSMCの米アリゾナ州工場で製造される半導体のコストが、台湾工場の同等品より5〜20%高くなると明かした。
ブルームバーグが報じたもので、米国製造回帰のコスト構造が改めて注目されている。
TSMCの米国製半導体、台湾製より5〜20%高 AMDが言及
米AMDのリサ・スーCEOは7月23日、ワシントンで開催されたAIイベントの場で、TSMC(台湾積体電路製造)の米アリゾナ工場で生産される半導体が、台湾での同様の製品より5〜20%高コストになるとの見解を示した。
AMDはアリゾナ工場から2025年内にも最初のチップ供給を受ける見通しであり、コスト上昇は現実的な経営判断に直結する問題となる。
スー氏はブルームバーグテレビジョンの取材に対し、同社が世界各地に供給元を分散していることに触れ、「米工場の高いコストにはそれに見合う価値がある」と語った。
スー氏は同日開催されたAI政策イベントで登壇し、TSMCのアリゾナ工場にも言及。
歩留まり(※)については「台湾工場に匹敵する水準にある」と述べ、同拠点の量産準備が順調に進行していることをアピールした。
このイベントにはAI業界と政界の関係者が集まり、トランプ大統領が登壇したほか、政権の「AI行動計画(アクションプラン)」の詳細も共有された。
スー氏は計画について「AI行動計画で私が気に入っている点は、かなり実行可能性が高いことだ」と評価し、政策の方向性を歓迎する姿勢を見せた。
※歩留まり:製造工程において、規格を満たす良品の割合を指す。半導体製造では量産性や利益率に直結する重要な指標。
製造拠点多様化は供給安定の鍵 コスト高とどう向き合うか
TSMCのアリゾナ工場が商用生産に移行するなか、米国での製造は供給安定化という大きなメリットをもたらすと考えられる。
一極集中型のサプライチェーンでは、地政学的リスクやパンデミックのような突発事態への耐性が乏しい。
AMDをはじめとする企業が製造地の多様化を進めるのは、コストよりも事業継続性を優先する合理的判断といえる。
一方で、5〜20%というコスト上昇は無視できない水準であり、最終製品の価格や収益性への影響は避けられない。半導体業界全体が価格競争の渦中にあるなかで、どこまでユーザーや市場がその価格転嫁を受け入れられるかは不透明である。
今後は、アリゾナ工場の運用効率向上や政府による補助金政策、インフラ整備などがどこまでコスト差を緩和できるかが焦点となるだろう。
米国内生産の成否は、コストとリスク分散のトレードオフをどう最適化するかにかかっている。