AI需要が電力価格を押し上げ アメリカ最大の送電網運営会社、過去最高コストに

2025年7月22日、米ブルームバーグは、米国最大の送電網運営会社PJMインターコネクションの発電容量費用が、過去最高となる161億ドルに達したと報じた。
AIブームによる電力需要の急拡大が主な要因とされている。
AI需要の拡大受け、PJMの容量費用が過去最高を記録
米国の送電網運営最大手であるPJMインターコネクションは、2025年度に発電事業者などへ支払う容量確保費用が161億ドル(約2兆3600億円)に達し、前年の147億ドルを上回って過去最高を記録した。これにより、1メガワット・1日あたりの容量価格は269.92ドルから329.17ドルに上昇した。
容量価格の上昇は、AI(人工知能)ブームを背景にした電力需要の急拡大が一因とされる。とりわけ、大規模なデータセンターの新設が送電網に与える負荷が顕著である。
PJMのエグゼクティブバイスプレジデント、スチュ・ブレスラー氏は、「需要増の大半は大規模な負荷とデータセンター新設によるものだった」と明かした。
一方、PJMは今回の需要増加のうちAIが占める具体的な割合については明示していない。
また、電力予測会社アンペロン・ホールディングスのCEOで元電力トレーダーのショーン・ケリー氏は、「これは文字通り発電能力が不足していることを示している。トレーダーや資産の保有者には良いことだが、消費者には好ましくない」とコメントしている。
高まる発電投資の必要性と電気料金上昇の懸念
AIによる電力需要の増加は、米国の送電・発電インフラの構造を再検討させる契機となっている。
新たな需要に対応するには、発電所の増設や送電網の増強が不可欠であり、これにより供給安定性や長期的なエネルギー政策の実現が期待される。
一方で、容量価格の上昇は企業や家庭にとって電気料金の負担増を意味し、物価全体への波及効果も懸念される。
特に中小企業や低所得層にとっては影響が大きく、社会的な議論を呼ぶ可能性がある。
政治面では、エネルギーコストの高騰に対する有権者の反発を避けるため、政策当局は補助金や価格抑制策を模索する必要があると考えられる。
さらに、脱炭素や再生可能エネルギーへの移行とのバランス調整も求められ、電力政策はより複雑化すると予想できる。
今後は、AIとエネルギーの関係性を中長期的視点で捉えつつ、持続可能な電力供給モデルを構築することが不可欠となるだろう。