Spotify、故人歌手名義の偽装AI楽曲を削除　著作権侵害巡り審査体制に課題

Spotify上に故Blaze Foley氏の名義で公開された新曲「Together」が、実際は正体不明の人物によるAI生成楽曲だったことがわかった。2025年7月21日に、米メディア404 Mediaが報じたことにより発覚した。
Spotifyは同曲を削除し、今後の対応強化を明言している。

故Blaze Foley氏の名義で偽AI楽曲、Spotifyが削除対応

1980年代に活躍し1989年に他界したカントリー歌手Blaze Foley氏のSpotifyアカウントに、突如として新曲「Together」が公開された。
だがその音源は、Foley氏の作風とは明らかに異なるもので、アルバムアートも含めAIによる生成と見られる。

問題の楽曲を投稿したのは、「Syntax Error」と名乗る不明の人物であり、Foley氏やその遺族とは一切関係がない。
Spotifyはこの事態を受けて、当該楽曲を即時削除した。
配信元のSoundOnに通告した上で、今後同様の不正を繰り返すライセンサーやディストリビューターに対しては恒久的な排除措置を取ると表明した。

報道によれば、Spotify上にはすでに複数の実在アーティストの名義を騙ったAI音源が出回っており、同社の楽曲配信審査体制の脆弱性が浮き彫りとなっている。

AI音楽の氾濫とプロフィール偽装　Spotifyが直面する倫理的・制度的課題

今回の件は、AI生成音楽の法的・倫理的リスクがいかに現実の脅威となりつつあるかを示す象徴的な事例といえる。
特に、既存アーティストの名義を無断で使った偽楽曲の投稿は、著作権侵害だけでなく、名誉毀損やファンの誤認を招く深刻な問題である。

Spotifyは現状、S第三者配信プラットフォーム経由でコンテンツを受け入れているため、審査体制に課題が残ると考えられる。
今後、AI音楽が急増する中で、検証体制の再構築は喫緊の課題となるだろう。

一方で、AI技術による音楽生成そのものは創造性の拡張として期待も大きく、完全排除は現実的ではない。
ただ、誰の名義でどのように使われるか、という点において、誰でも楽曲を生成できるAI音楽が悪用されるリスクは高い。
アーティストの死後もその名前が無断使用される可能性がある今、Spotifyや各プラットフォームには、ユーザーが誤って偽作品に接しないための透明性確保が求められていると言える。

今後は、ユーザー側にも、「新曲」が真作かどうかを自ら見極めるリテラシーが求められる時代が到来しているのではないだろうか。