マッキンゼー、中国で生成AIコンサル業務停止 米政府の対中規制に対応

2025年7月23日、英フィナンシャル・タイムズ(FT)は、米コンサル大手マッキンゼーが中国本土事業に対し、生成AI関連のコンサルティング業務を引き受けないよう指示したと報じた。米政府による対中技術監視の強化が背景にあるという。
生成AIに関するコンサル業務、中国で全面停止
マッキンゼー・アンド・カンパニーは、中国本土において生成AI関連のコンサルティング業務を今後一切引き受けないよう、現地チームに通達したとされる。これは米政府による対中輸出規制や監視体制の強化に対応する措置であり、米中間の技術覇権をめぐる緊張が企業活動に波及していることを示す。
英紙FTの報道によると、今回の禁止措置は中国企業に限らず、多国籍企業が中国国内に設けた拠点での生成AI関連プロジェクトも対象に含まれる。ただし、既に成熟し製品化されているAI技術を用いた業務については例外とし、禁止の対象外とされている。
マッキンゼー広報はFTの取材に対し、2024年以降、中国市場での顧客対応方針を見直し、多国籍企業および中国民間企業への業務提供に重点を置いていると説明。その上で「当社は業界で最も厳格な顧客選定方針を取っている。今後もこの方針を更新し強化していく」と述べた。
米政府は近年、AIや量子コンピューティングといった先端技術が軍事転用されるリスクを警戒しており、米企業に対し中国との技術協業の制限を強めている。今回の措置もその一環とみられる。
国際企業に広がる「中国AI回避」の動きと懸念
今回のマッキンゼーの対応は、単なる一企業の方針変更にとどまらず、国際企業による「生成AIの対中業務自粛」という大きな流れを象徴する出来事という見方もある。特に米国政府の制裁リスクを警戒する外資系企業にとっては、今後の中国事業戦略の見直しが避けられない局面に入っている。
生成AIは企業の業務効率化や新規事業創出に不可欠な存在となりつつあるが、それゆえに国家間での技術規制や地政学リスクの影響を受けやすい。マッキンゼーのような大手ファームが業務を停止すれば、他のコンサルティング会社やITサービス企業も追随する可能性がある。
一方、中国市場の巨大さは依然として無視できない。特に、生成AIを活用した産業DXや製造業の効率化需要は今後も高いとみられ、外資企業にとっては事業機会とリスクの間で難しい判断が求められるだろう。
AI規制の強化が進むことで、企業が事業展開先として中国を避ける動きが加速するかもしれない。
国際企業が直面する「技術と地政学」の板挟みは、今後さらに複雑化していくと予想される。