アマゾンがAIリストバンド開発企業Beeを買収へ 音声×AI領域で再参入の動き

2025年7月22日(現地時間)、米アマゾン・ドット・コムがAI搭載ウェアラブル機器を開発する米スタートアップ「Bee」の買収に合意したことが明らかになった。米西海岸で開発された低価格リストバンドの技術が再注目されているようだ。
AIリストバンド開発の米Bee、アマゾンが買収に合意
今回の買収は、Beeのマリア・デ・ルルデス・ゾロCEOがSNS(LinkedIn)を通じて公表し、アマゾンも同日中に事実関係を認めた。まだ契約調印には至っておらず、買収額や締結時期などの詳細は明かされていない。
Beeは2022年創業のスタートアップで、サンフランシスコに本拠を置く。開発したリストバンドは、日常会話をリアルタイムで文字化し、その内容をAIが分析して要約や次の行動提案を行うというもので、価格は約50ドルに抑えられている。
アマゾンの広報担当者は「ビーと協力して製品の使い勝手を高める」と説明しており、Beeの自然言語処理(※)技術やユーザーインターフェースに高い関心を寄せていることがうかがえる。
なお、アマゾンはかつて「Halo」という健康管理用リストバンドを展開していたが、2023年に同分野から撤退していた。今回のBee買収により、音声×AI領域で再びウェアラブル市場に挑戦する姿勢を示した格好だ。
※自然言語処理:人間の言葉をコンピュータが理解・解析・生成する技術。AIの応用分野の一つとして注目されている。
再参入が示すAI戦略の転換点 ユーザー囲い込みの鍵握るか
Bee買収により、アマゾンは再びAIウェアラブル市場への足がかりを得ることになるだろう。特に、スマートスピーカー「Echo」で培った音声インターフェースの技術との融合により、新たなプロダクト展開が期待される。
日常会話を記録・要約し、行動提案まで行うリストバンドは、ユーザーの生活に深く入り込む可能性を秘めている。これは従来のフィットネスや健康管理中心のウェアラブルとは異なる価値提案であり、利用者のライフログを軸に新たなエコシステムを構築できる可能性がある。
一方で、音声データや会話内容の取り扱いについては、プライバシーやセキュリティ面での懸念も残る。個人情報の取り扱いに対する規制やユーザーの信頼をどう確保するかが、今後の普及に向けた鍵となるだろう。
競合のGoogleやAppleも同様の領域で技術を蓄積しており、市場は今後一層の競争激化が予想される。Beeの技術がアマゾンの既存サービスとどう統合されるかが、成否を左右する要因となりそうだ。