GoogleのAI Overview表示でクリック率半減 SEOへの影響に懸念

2025年7月22日、米Pew Research Centerは、Google検索に表示されるAI要約「AI Overview(AIO)」が、従来の検索結果と比べて外部サイトへのクリック率を低下させる可能性があるとする分析結果を公表した。
AI要約で従来型リンクのクリック率が約半減
7月22日、Google検索に表示されるAI生成の要約「AI Overview(AIO)(※)」が、外部サイトへの誘導に与える影響が明らかになった。
2025年3月に実施された調査では、米国在住の成人900人のスマートフォン利用データをもとに、検索語句・表示結果・クリック動向などが記録された。対象期間中に行われた6万8879件の検索のうち、1万2593件(約18%)でAIOが表示されていた。
このうち、AIOが表示された検索結果では、ユーザーが従来の青字リンク(AIO内のリンクを除く)をクリックした割合は8%にとどまり、AIOが表示されなかった場合の15%と比べて大幅に減少していた。AIO内に含まれるリンクのクリック率はさらに低く、全体のわずか1%だった。
また、AIOが表示された検索では、約3分の2のユーザーがリンクをクリックせずにGoogle検索を離脱しており、AIOだけで情報ニーズが満たされている可能性があるとPewは分析している。
さらに、AIOが引用する情報源では、Wikipedia、Reddit、YouTubeが合計で15%を占め、政府系サイトも6%と上位にランクインしていた。これらは非営利、またはGoogle傘下である点も注目される。
一方で、Googleは「人々はAI搭載の体験に魅力を感じており、Google検索のAI機能によってより多くの質問が可能となり、ウェブサイトとの新たな接点が生まれている」と反論。
Googleは、「この調査は欠陥ある方法論と、Google検索のトラフィックを適切に反映していない歪曲されたクエリセットを用いている」と述べた。
※AI Overview(AIO):Google検索に導入されているAI要約機能。検索語句の意図を解析し、関連する情報を自動生成・要約して検索結果の最上部に表示する。従来のリンククリックを経ずに情報が得られる点が特徴。
パブリッシャーの危機感とAI検索の可能性
AIOの普及は、検索トラフィックに依存するオンラインメディアにとって、明確なリスクをはらんでいる。とりわけ、AIO経由の流入がSearch Consoleで可視化されない現状では、影響を正確に把握・対策する手段に乏しい。
一方、ユーザー視点では、検索体験の質が向上するという利点もある。AIOは質問文形式などの高度なクエリに対応し、目的の情報を即座に提供することで、検索の手間を軽減している。また、Wikipediaや政府系サイトといった信頼性の高い情報源に優先的にリンクが設けられる傾向は、誤情報の拡散を防ぐという観点で評価できる。
将来的には、検索エンジンの役割が「リンク集」から「答えの提供者」へと進化していく中で、パブリッシャーとAI要約機能の共存モデルが模索される必要がある。
質の高いコンテンツをいかにAIに参照・引用させ、正当なトラフィックを還元させるかが、今後のメディアの生存戦略に直結するだろう。