トランスコスモスとAI inside 2種の非定型帳票AIソリューション提供

2025年7月17日、国内のトランスコスモス株式会社とAI inside株式会社は、非定型帳票のデータ処理を効率化する2つのAIソリューションを提供すると発表した。異なる技術特性を持つ両社の協業により、業務現場の自動化が加速すると見られる。
非定型帳票処理を支援する2種のAIソリューションを展開
今回の発表で両社が提供するのは、非定型帳票(※)に対応した2種類のAIソリューションである。手書きや表形式、複数ページなど、構造が多様な文書を迅速かつ正確に処理することを目的としている。
1つ目のソリューションは、AI insideの統合基盤「AnyData」を活用し、帳票単位での個別学習を可能にするモデルだ。トランスコスモスが持つ実務データへのアノテーションによって、AIの精度が高まり、業種や帳票形式に関係なく対応できる柔軟性を確保している。
2つ目は、全文OCRで帳票内の文字情報を読み取った後、生成AIによって必要な項目を抽出・構造化するソリューションである。
ここでは、日本語処理に特化したSLM「PolySphere」が活用されており、煩雑な帳票のデータ化作業を自動化することで、人的リソースの削減と業務効率の向上が図られる。
さらに、エッジコンピューター「AI inside Cube」を用いたオンプレミス運用により、クラウドを介さず高セキュリティな環境下でも導入可能となる。これにより、医療や金融など機密性の高い業務にも安全な形で適用できるとされている。
※非定型帳票:手書きや複雑なレイアウトを含む多様なフォーマットの文書。一般的な定型帳票とは異なり、構造のばらつきが大きいため自動処理が難しい。
業務改革と精度向上の両立へ 導入がもたらす期待と課題
今回の取り組みにより、企業や自治体が抱える帳票処理の負担は大幅に軽減されるとみられる。従来は人手に依存していた複雑な帳票の読み取り作業を、AIによって一部または全面的に自動化することで、処理時間の短縮と人的ミスの抑制が実現できる。
一方、導入にあたっては、既存業務との整合性を取るための調整や社内フローの見直しが求められる場面もある。
特に、多様な帳票形式に対応するには、モデルの初期学習やフィードバックの仕組みが運用の鍵となる。業務ごとに最適なソリューションの選択が不可欠だ。
また、生成AIを用いた項目抽出では、その判断ロジックがブラックボックス化するリスクも考えられ、導入企業には透明性確保のための運用ガイドライン整備が求められる。
誤抽出が業務に与える影響を最小限に抑えるための二次チェック機構の構築も重要となるだろう。
とはいえ、AI insideとトランスコスモスの連携は、精度と実用性を両立させる仕組みとして注目だ。特に今後は、帳票の特性に応じて両ソリューションを柔軟に使い分けることが業務全体の最適化につながると期待される。