元OpenAIエンジニアが退職後に実情を公開 急拡大と混乱、現場から見たリアルな1年

現地時間2025年7月15日、米AI大手OpenAIの元エンジニアであるカルビン・フレンチ=オーウェン氏が、自身のブログで在職中の経験を詳述した。
急成長する企業の内情や、プロダクト開発の実態、安全性への姿勢など、注目を集める内容となっている。
OpenAI、1年で社員3倍に 元エンジニアが語る開発現場の混乱と文化
OpenAIの元エンジニア、カルビン・フレンチ=オーウェン氏が公開したブログによって、同社の急成長とその裏にある混沌が明らかになった。
氏はCodex(※)の開発に従事し、在籍期間はわずか1年だったが、その間に社員数は1,000人から3,000人へと急増。
急拡大にともない、社内の報告体制や意思決定の混乱、重複作業などが日常的に起こっていたと振り返った。
オーウェン氏が参加したCodexの開発チームは、エンジニアや研究者、デザイナーなど十数名で構成され、約7週間で同製品を完成させた。
リリース直後からユーザーが殺到し、ChatGPTのUI内に表示されたことで爆発的な反響があったという。
OpenAI内部では、スタートアップらしく、官僚主義的な手続きは省かれており、自分のアイデアを実行する権限を与えられているという。
ただ、社内で複数のチームが同じことを重複して行うケースも多く、権限の大きさのメリットとデメリットが描写されている。
また、コードベースは柔軟なPythonを使うがゆえに整備が追いつかないことも多かったという。
熟練のGoogle出身者と、新進の博士課程修了者が混在するチームでは、品質にバラつきが出ることも珍しくなかった。
さらに、同社文化の特異性として「Slackだけで運営が完結している」「Xの話題にすばやく反応する」など、スタートアップ的な側面が維持されていると指摘。
ある同僚が「OpenAIはTwitterの空気で動いている」と冗談交じりに語ったというエピソードも紹介されている。
また、外部からはAI安全性を軽視していると批判されがちな点についても、「実際には『ヘイトスピーチ』『プロンプト注入』『政治的偏向』といった現実的なリスクへの対応に注力している」と述べ、内部の認識との乖離を指摘した。
※Codex:OpenAIが開発したコード生成特化の大規模言語モデル(LLM)。競合にはCursorやClaude Code(Anthropic製)などがある。
今後の成長に求められる安定性と制度化
フレンチ=オーウェン氏の証言からは、OpenAIが依然としてスタートアップ精神を維持していることがうかがえる。
この点はスピード感や柔軟性というメリットがある一方で、プロジェクトの重複、品質のばらつき、社内運用の非効率といった構造的リスクにも直結する。
今後、同社が世界的なAIインフラとしての信頼性を高めていくには、拡張性だけでなく、組織的な安定性・運営の制度化が不可欠となるだろう。
スタートアップの機動力と、大企業としての責任の両立という難題に、OpenAIは本格的に向き合うフェーズに入っていると言える。
フレンチ=オーウェン氏の証言は、AI産業の最前線で働く人々が直面する現実を可視化し、今後の議論に一石を投じる内容と言えるだろう。
フレンチ=オーウェン氏のブログ記事 : https://calv.info/openai-reflections