経産省が楽天の生成AI開発を支援 日本語文脈処理の革新を目指す

2025年7月15日、楽天グループは、経済産業省とNEDOによる「GENIACプロジェクト」第3期に採択されたと発表した。日本語特化型の生成AI基盤モデルを開発し、複雑な文脈処理とパーソナライズの高度化を図る。
楽天、日本語特化の高性能生成AI基盤モデルを国の支援で開発へ
楽天は2025年8月より、長期記憶と対話型学習を融合させた生成AI基盤モデルの研究開発を開始する。これは、経産省とNEDOが進める「GENIAC」プロジェクトに採択されたことによるもので、計算資源や技術支援を受けながら、日本語に最適化されたモデルの開発を進める方針だ。
同社は2024年3月から、オープンでコスト効率に優れた日本語特化型大規模言語モデル(LLM)に取り組んできた。これまでも小規模ながら高性能なモデル構築を重視し、リソースの制約下でも実用的なAIを目指してきた経緯がある。
今回の取り組みでは、従来のトランスフォーマーアーキテクチャが抱える文脈処理の限界に対し、拡張メモリ機能を搭載することで長文理解力の強化を図る。応答生成時に利用できる情報の幅が大きく広がることで、再現性と精度の両面で飛躍的な向上が見込まれる。
プロジェクトの中核には、ユーザーとの継続的な対話から好みや知識を蓄積し、より個別最適な応答を実現する仕組みが据えられている。楽天は、パーソナライズ性に優れたAIエージェントの実現を通じ、言語AIの社会実装を推進する構えだ。
高精度日本語LLMの波及効果と運用課題 パーソナライズ化の先に見える分岐点
楽天の生成AI開発は、国内企業にとって日本語特化の高性能モデルが現実味を帯びてきたことを意味していると言える。これにより、国産AIの信頼性や実用性に対する評価が向上し、自治体や企業による導入が加速する可能性がある。
一方で、長期記憶や対話履歴を活用したパーソナライズには、ユーザーデータの継続的な管理とセキュリティが不可欠となるだろう。学習・推論コストの最適化が前提ではあるが、システム維持には依然として技術的・財務的な負荷が伴うと予想できる。
また、複雑な文脈処理に対応するLLMは応答の信頼性も高まるが、出力の予測不能性や説明責任の所在といった課題は依然残る。ビジネスユースにおいては、透明性の担保と利用範囲の明確化が求められる。
今後は、楽天が開発した技術が他社にも転用可能な基盤となるかが焦点となるだろう。
コスト効率と機能性を両立するモデルが業界標準となれば、日本語対応AIをめぐる競争環境に大きな影響を及ぼすだろう。