JAL、基幹システムにAI導入へ 復旧・故障予測を高度化し運航安定性向上

2025年7月11日、日本航空(JAL)が航空機の運航や予約業務に関わる基幹システムにAI(人工知能)を導入すると報道された。復旧や改修提案、故障予測などを担うAIを今秋にも本格稼働させ、ITインフラの安定性向上と業務効率化を目指す。
AIでシステム障害の復旧を迅速化 未然の故障防止も
JALは今秋にも基幹システムの保守・運用領域にAIを導入する。
障害発生時に原因を特定し復旧や改修方法を技術的に提案するほか、事前にリスクを察知して、故障を未然に防ぐ予測機能も備える。
航空会社にとって基幹システムは、運航や予約、手配などの中枢を担っており、トラブルが生じれば広範な業務に波及する。AI導入により、運航影響を最小化させ、システムの信頼性も向上する見込みだ。
この取り組みは、JALが進める全社的なデジタル変革(DX)の一環でもある。
すでに同社は基幹システムのクラウド化を進めており、AI活用はその次のステップに位置づけられる。
JALは2024年4月にデジタルテクノロジー本部とJALインフォテックを統合し、新組織「JALデジタル」を設立した。社内外のIT知見を集約し、DX推進の中核として活動を強化している。
今回のAI導入も、JALデジタル主導で進められる。基幹システムの高度化を通じて、ITインフラの柔軟性と即応性を高めていく見込みである。
JALデジタルが全社DXを牽引 業務改革と顧客サービスの両立へ
今秋に予定されているAI基盤の本格稼働は、JALの基幹システム運用の転換点となる可能性がある。今後は運用支援だけでなく、リスク予測や自動化の範囲をさらに広げていくことが予想される。保守・監視業務を効率化させるとともに、障害対応にかかる人的リソースの最適化も期待される。
とりわけ注目できるのは、予測保守機能の高度化である。
運航システムや予約管理だけでなく空港設備や機材整備など周辺領域へのAI活用が進めば、JAL全体としての業務レジリエンスは飛躍的に高まるだろう。
また、今回の取り組みが成功すれば、他の航空会社や交通インフラ企業にも波及し国内のインフラ系AI活用のモデルケースとなる可能性もある。
ただし、AI活用が本格化するほど、透明性や説明責任も問われるようになるだろう。
システムのブラックボックス化を避け、AIの判断根拠を現場で理解・検証できる体制が求められる。技術偏重に陥らず、「人とAIの共創」を前提とした全社的な運用設計が、今後の成否を分けることになりそうだ。
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