JR東・東京メトロなど鉄道9社、日傘シェア「アイカサ mini」導入 猛暑対策で首都圏150拠点に展開

2025年7月10日、JR東日本や東京メトロなど首都圏の鉄道9社は、日傘のシェアリングサービス「アイカサ mini」の導入を各駅で順次開始した。
運営はNature Innovation Groupが担い、猛暑下での快適な移動支援を目的とする国内初の取り組みとなる。
都内64駅・150拠点に日傘3000本 心理的抵抗の声に応えた“貸し傘”
JR東日本、東京メトロ、小田急、京王、西武など首都圏の鉄道9社は、日傘のシェアリングサービス「アイカサ mini」を7月10日から各駅で順次導入を開始した。
サービスの運営は、既存の傘シェア「アイカサ」を展開するNature Innovation Group(NIG)が担う。今回の導入は、日傘タイプとしては国内初。
導入駅は山手線全駅を含む都内64駅、設置箇所は約150拠点、初期本数は約3000本。新宿、渋谷、池袋、品川など主要ターミナル駅でも利用でき、専用アプリを使って24時間140円でレンタル可能だ。
傘は260グラムの折り畳み式で、UVカット率99.9%以上、遮光率99.99%以上、さらに耐風仕様で突発的な豪雨にも対応する。
さらに7月14日からは、月額280円の「使い放題プラン」加入者向けに、初回1本の郵送受付を開始。丸川照司社長は設置駅について「日中の滞在時間の長さや、山手線に隣接する路線を中心に選定した」と説明している。
背景には、男性を中心とした「日傘の購入に抵抗がある」という声への対応もある。NIGが男女各500人に調査を実施した結果、約半数の男性が「熱中症対策として日傘を使いたい」と回答した一方で、44.6%が「日傘の購入に抵抗を感じる」とした。
丸川社長は「アプリですぐに借りられるとなれば、(購入に抵抗がある)男性には“免罪符”となりうるはず」と話す。
また本サービスは、鉄道9社とIT企業TISによる共同事業「TRIP」の一環であり、東京都の猛暑対策「沸とう京」にも連動する。
都市型の猛暑インフラとしての可能性と運用面の課題
今回の取り組みは、日傘のシェアリングを通じて都市生活者の熱中症リスクを軽減しようとする、社会インフラ型サービスとしての性質を帯びている。
特に、外回りの多いビジネスパーソンにとっては、移動中の暑さ対策という観点から実用性が高い。
今後、公共空間における「貸し傘」が定着すれば、暑さへの適応力を高める新しい都市モデルとして注目されるだろう。
一方で、課題も残る。例えば、設置エリアが限定的であること、傘の紛失や故障への対応、利用者間のモラル維持など、スムーズな運用には継続的な管理体制が求められる。
また、サービスの継続には一定の利用率が不可欠であり、定着にはユーザー側の認知と習慣化がカギとなる。
今後、自治体や企業との連携が進めば、駅以外の施設や観光地などへの展開も視野に入るかもしれない。
都市の暑さ対策として、公共交通とシェアリングを掛け合わせた新たな試みが、全国に広がるか注目される。