DNP、企業文書に生成AIのファクトチェック導入 記者ハンドブック準拠の表現校正も可能に

2025年7月11日、大日本印刷(DNP)は、販促物やパッケージ記載の誤記・矛盾を検出する「DNP AI審査サービス」に、生成AIによるファクトチェック機能を追加したと発表した。
記者ハンドブック準拠の文書チェックもオプションで提供する。
DNP、AIで販促物の事実確認を自動化
DNPは、企業の広報資料や販促物などの正確性をAIで確認する「DNP AI審査サービス」に、生成AIを活用したファクトチェック機能を新たに実装した。
この機能は、企業が過去に発行した統合報告書やニュースリリースといった文書をAIに学習させることで、文書間の情報矛盾や事実誤認を自動で検出するものだ。
加えて、共同通信社が監修する「記者ハンドブック 第14版 新聞用字用語集」に準拠した文書チェック機能も、オプションとして利用可能になった。
用語や用字の誤りに加え、差別語・不快語、ジェンダー・マイノリティへの配慮に欠ける表現も検出し、適切な代替案を提示する。
サービスは、企業のIR資料や調査レポート、講演資料など、多岐にわたる公式文書のチェックに対応する。
統合報告書やニュースリリースなど、企業の各種発行物について文書の校正・校閲業務の精度と効率を高めることを狙っている。
表現校正機能については、新聞基準に準拠した文体の統一が図れるだけでなく、ジェンダー配慮や差別的表現の排除といった現代的な社会要請にも対応する。
校正者の作業時間を短縮しつつ、表現の社会的適切性も担保できる見込みだ。
基本価格は税別で、初期ライセンス費用が800万円から、月額利用料が60万円からである。
オプションの記者ハンドブック準拠チェックは、初期費用が50万円、月額利用料が5万円からとなっている。
企業文書の信頼性強化と表現の統一を後押し
DNPの新機能は、企業が発信するあらゆる文書の整合性と信頼性を高める手段として注目できる。
特に、誤情報への批判が高まる現代において、AIによる事実確認の自動化は企業広報の透明性と精度を支える基盤になりうる。
また、法令改定や業界ルールの変化をAIに学習させることで、業務マニュアルや契約文書の更新ミスを未然に防げる点も評価するべきポイントだ。
加えて、複数の資料間で引用や参考文献の不整合を検出できるため、製薬やエネルギーといったインフラ系企業にも有用だろう。
一方で、AIによるファクトチェックの精度は、学習させたデータに大きく依存するため、古い情報や誤った記述がAIに含まれていれば、誤検出や見落としのリスクは高まると考えられる。定期的なアップデートは不可欠となるだろう。
DNPは、今後さらに機能を拡充し、インフラ系や広報部門などを中心に導入を進め、関連サービスを含めて2028年度までに売上10億円を目指すとしている。