SB C&SがAI導入前の検証施設を開設 NVIDIA製品でPoC環境を実現

2025年7月10日、SB C&Sは最新AIソリューションの導入前に事前検証できる専用施設「C&S AI INNOVATION FACTORY」の開設を発表した。東京府中のデータセンター内に設置され、NVIDIA製品などを活用したPoC環境が整備されている。
導入前にAI基盤を実機で検証できる環境を整備
SB C&Sが開設した「C&S AI INNOVATION FACTORY」は、AIソリューションの事前検証に特化した常設施設である。場所はIDCフロンティアの「東京府中データセンター」内に設置されており、ハードウェアおよびソフトウェア両面から高度な検証環境が提供される。
施設内には、NVIDIAのAI向けソフトウェア群「NVIDIA AI Enterprise(※)」を搭載した最新の「NVIDIA DGX H200」サーバーを中核に、超高速な相互接続を可能にする「NVIDIA Quantum-2 QM9700」スイッチ、AIデータ処理に最適化された「DDN ES400NVX2」ストレージなどを実装。
これらは、生成AIや大規模な機械学習処理に対応できるエンタープライズ向けインフラとして構成されている。
ユーザー企業は、この施設を用いて導入予定のAIソリューションが現実の業務において期待通りに稼働するかを事前に確認できる。PoC(概念実証)としてだけでなく、リモート接続によるGPUリソースの貸与、施設見学を含むデモツアー、さらにオンプレミスAI活用に必要な教育トレーニングまで、実用フェーズを見据えた包括的な支援体制が整っている。
※NVIDIA AI Enterprise:NVIDIAが提供する企業向けAIソフトウェアスイート。生成AIやデータ分析、推論モデルの開発・運用を支援する各種ツールやライブラリで構成されている。
企業のAI導入を後押し 実運用前の不安を解消へ
AI導入において多くの企業が直面するのが、「実際に導入しても成果が出るか」という不確実性である。SB C&Sは、C&S AI INNOVATION FACTORYを通じてこの不安を払拭し、企業のAI活用を加速させたい考えだ。
とりわけNVIDIA製品を核とした構成は、国内企業にとっては本格的な生成AIやディープラーニングモデルに対応する初期ステップとして有効だと考えられる。複雑なAIワークロードの検証を自社環境に持ち込まずに済むという利便性は、リソースの限られた中堅・中小企業にも大きなメリットとなるだろう。
さらに、オンプレミス環境でのAI活用に関する教育コンテンツが整備されている点も注目に値する。クラウド依存ではなく、自社でAIインフラを運用する際に直面する課題やベストプラクティスを事前に学べることは、将来的なビジネススケールの拡大にもつながり得る。
一方で、こうした高度な施設の利用には一定の技術理解と導入計画が求められるため、支援体制の充実が今後の鍵を握ると思われる。SB C&Sとしても、教育・サポート面の強化を通じて、AI導入に慎重な企業層を取り込む戦略と見られる。
今後、他のSIerやクラウドベンダーが同様のPoC施設を整備する動きが広がれば、AI基盤市場はより競争が激化すると考えられる。