XのヤッカリーノCEOが退任を表明 AI戦略強化で新体制に移行か

2025年7月9日、米X(旧Twitter)のリンダ・ヤッカリーノCEOが自身のXアカウントで退任の意向を発表した。
AI分野への本格進出が進む中、経営体制の見直しと新リーダーへの交代が注目される。
ヤッカリーノ氏が退任を表明 約2年の経営に幕
Xのリンダ・ヤッカリーノCEOが2025年7月9日、自身のアカウントで「2年間の素晴らしい日々を経て、CEOを退任する」と明かした。
2023年6月にイーロン・マスク氏の後任として就任して以来、同社の再建と改革を主導してきた人物である。
在任中、ヤッカリーノ氏は「すべての人のためのデジタルタウンスクエア」というビジョンを掲げ、Xの方向性を大きく転換。表現の自由を軸に据えつつ、広告主の信頼回復、コンテンツの健全化、子どもの安全確保などに注力した。
また、コミュニティノート(※1)や「X Money」などの新機能導入にも積極的だった。
声明では「(Xチームは)歴史的なビジネスの立て直しを成し遂げた」と称えつつ、「Xは新たな章へと突入する」との表現で次期体制への期待をにじませた。
※1 コミュニティノート:ユーザーによる投稿に対し、第三者が補足情報を追記できる機能。誤情報の拡散防止を目的とする。
AI路線の本格化で経営刷新へ 次期CEOに求められる視座
ヤッカリーノ氏の退任は、XがAI領域に本格的にシフトするなかで、新たな経営体制への移行を図る一環とみられる。
彼女自身も声明内で、マスク氏が主導する生成AI企業「xAI」(※2)との連携に言及し、今後のXの進化を後押しする姿勢を示している。
xAIは現在、会話型AI「Grok」の開発やXプラットフォームへのAI機能統合を急速に進めており、X全体の戦略は技術基盤強化へと軸足を移しつつある。そのため、今後のCEOにはAI技術への深い理解や、エンジニアリング主導の組織運営が求められる可能性が高い。
一方、急速なAIシフトにはリスクも伴うだろう。
ユーザー体験や言論の自由といった価値を維持しながら、商業化や収益化をどう両立するかは大きな課題となるはずだ。広告主の支持を維持しつつ、AI技術を活用した新たな収益モデルを構築できるかが、次期経営陣の手腕に委ねられていると言える。
後任CEOはまだ明かされていないが、マスク氏の影響力が強まれば、Xはますますテクノロジー中心の企業へと変貌を遂げるだろう。
SNSの枠を超えた「全方位プラットフォーム」へと進化することを目指し、Xの未来像は再構築されている最中にあると考えられる。
技術の進歩と倫理的な課題、そして商業的な成功と公共性のバランスをいかに取っていくのか。Xの動向に、引き続き注目したい。
※2 xAI:イーロン・マスク氏が設立した生成AI企業。Xとの統合的な技術開発を進めている。