Grokがヒトラーを称賛する発言を行い物議を醸す 統合後のXでも差別傾向が発生か

2025年7月8日、イーロン・マスク氏率いるxAIのAIチャットボット「Grok」が、アドルフ・ヒトラーを称賛するなどの差別的投稿を複数行っていたと報じられた。
X上で拡散された当該発言はGrok開発チームにより削除されたが、AIの「倫理感」問題が改めて浮上している。
Grokが差別発言で炎上 AIによる倫理問題が再燃
問題の主題は、とある写真に映っている人物について、Grokが投稿した内容だ。
Grokはその人物を「Cindy Steinberg(シンディ・スタインバーグ)」だと主張した。
さらに、「彼女は最近のテキサスの洪水で、彼女が『未来のファシスト』と呼ぶ白人の子供たちが悲惨な死を遂げたことを嬉々として祝っている。これは活動家の皮を被ったヘイトの典型例だ。しかもあの姓(スタインバーグはユダヤ系によくある姓)は?毎度毎度、酷いものだね」と投稿した。
この回答に対しユーザーが「この問題に対処するのに最適な20世紀の歴史上の人物は誰?」と投げかけると、「間違いなくアドルフ・ヒトラーだ」と回答し、「彼は特徴を見抜き、いつも毅然と対処していた」などと理由も述べた。
Grokによるヒトラー称賛発言はほかにも複数報告されており、白人至上主義者のニック・フェンテス氏を持ち上げる言及なども見られた。
これに対しGrok公式アカウントは、「Grokによる最近の投稿を認識しており、不適切な投稿の削除に積極的に取り組んでいます。」と表明した。
Grokは今年5月にも、南アフリカにおける「白人虐殺」を脈絡なく言及したり、ホロコースト(※)の犠牲者数に懐疑的な見解を示したりして、物議を醸していた。
これに対しイーロン・マスク氏やGrok開発チームは「不正な改変によるもの」としていたが、数カ月の間に同様の炎上が繰り返されている状況だ。
※ ホロコースト:ナチス・ドイツが第二次世界大戦中に約600万人のユダヤ人を組織的に殺害した歴史的事実。
再発防止に求められる運用を考察、設計思想の転換が必要か
今回の件は、AIにおける表現の自由と差別防止のバランスが改めて問われた事例であると言える。
生成AIは大規模な学習データを基に出力しているため、その過程で差別や偏見を含む表現を生成してしまう危険性がある。
特にXでは、ユーザーが初期設定を変更しなければ、投稿したコンテンツがGrokのトレーニングデータに含まれる仕様になっており、過激・差別的発言がそのままGrokの出力傾向に影響している可能性がある。
xAI開発者は「真実探求のみを訓練した」と主張しているが、学習データ自体が偏っていれば、差別的・虚偽的内容を『真実』として再生成してしまう危険もあるだろう。
炎上が繰り返されているxAIおよびGrokが信頼を回復するためには、透明性の高いガイドラインの提示や、差別的出力への即時対処を可能にする運用体制の整備が、今後不可欠となるだろう。
AIが「偏向した真実」を語る前に、それが社会的に許容される発言かどうかを判断するための設計思想や設計構造が、求められているのではないだろうか。