OpenAI、スケールAIとの協業を打ち切りへ メタによる巨額出資が引き金に

2025年6月18日、米AI大手OpenAIが、データラベリング企業スケールAIとの協業を段階的に打ち切る方針を明らかにした。
メタ・プラットフォームズによるスケールAIへの巨額出資および経営者引き抜きを受け、競合との関係性を懸念した判断とみられる。
OpenAI、競合メタの動きを警戒しスケールAIと関係解消へ
OpenAIは、AI開発に不可欠なデータラベリング事業を展開するスケールAIとの協業を段階的に終了させる方針を固めた。
背景には、メタがスケールAIの約49%の株式を取得し、CEOであるアレクサンドル・ワン氏を新設の「スーパーインテリジェンス部門」に招いたことが影響している。
OpenAI広報は、今回の決定を認めた上で、スケールAIに対する依存度はもともと高くなかったと説明。
メタによる出資発表以前から、スケールAIからの供給を段階的に縮小していたという。
また、高度なAIモデルを支える専門的なデータを他社から調達する方針をすでに進めていたと述べ、協業打ち切りの影響が少ないことを主張した。
メタのスケールAIへの投資総額は約143億ドル(約2兆円)に上り、今後はスケールAI社員の一部がワン氏に同行する形でメタへ移籍する見通しである。
なお、スケールAIの広報は、本件に対するコメントを控えている。
2016年創業のスケールAIは、GoogleやOpenAI、メタといった主要AIプレイヤーにサービスを提供してきた。
だが今回の件で、競合間でのデータ共有リスクが懸念される状況となっている。
ロイター通信の報道によれば、Googleも同様にスケールAIとの関係を見直し、打ち切りを検討中とのことだ。
競合であるメタの出資により、機密性の高いデータが意図せず共有される可能性が危惧されているようだ。
交差する各社の思惑
メタはスケールAIへ投資を強化することにより、優秀な人材とデータ基盤を手中に収め、AGI(※)の開発競争で優位に立つ狙いがあると見られる。
しかし、スケールAIがメタの「内製データ部門」として再編されることで、外部顧客との関係性はさらに希薄になる可能性が高い。
OpenAIにとっては、リスク低減の観点でこの判断が有利に働く可能性がある。
特にGPTシリーズのような先進的AIモデルのトレーニングには、精度と信頼性の高いデータが求められており、社外パートナーの情報的独立性がますます重要になっている状況だ。
スケールAIにとっては、テック業界の大企業との間で、難しい判断を迫られ、重要な協業先を失うことになる。
今回の事例は、成長著しいAI業界の中で、スタートアップの立ち回りが一層難しくなっていることを示していると言える。
今後も、OpenAI、Google、Metaといった巨大企業の狭間で、スタートアップとの協業や投資、買収などの動きは加速していくだろう。
※AGI:Artificial General Intelligence(汎用人工知能)の略。
与えられた課題を超えて人間のように柔軟な知的判断が可能な人工知能。
現在主流の特化型AI(特定のタスクに最適化されたAI)とは異なる次世代技術とされる。