米規制の明確化で暗号資産企業の新規上場が活発化、JPモルガンが報告 資金調達も回復基調に

現地時間2025年6月11日、米投資銀行JPモルガンは、米国における規制環境の改善を背景に、暗号資産関連企業の新規株式公開(IPO)やベンチャーキャピタル(VC)投資が活発化しているとする報告書を公表した。
米上院で審議中のステーブルコイン関連法案も、こうした動きを後押しする要因となっているという。
暗号資産企業のIPO件数が2021年水準に回復
JPモルガンが6月11日に発表したリサーチ報告書によれば、2025年に入ってからの暗号資産企業によるIPO件数が、過去の強気相場である2021年と同等のペースで推移しているという。
この動きの背景には、米国における規制明確化への期待がある。
特に、米上院で進展している「GENIUS法」が、規制の一貫性と予見可能性を高め、企業側の資本市場へのアクセスを後押ししていると指摘されている。
GENIUS法は、米国上院で審議中のステーブルコイン規制法案で、時価総額100億ドルを超えるステーブルコインを連邦レベルで監督対象とする内容であり、規制の重複や曖昧さを解消する枠組みだ。
同報告書では、リップル、クラーケン、コンセンシス、ブリッシュなど複数の有力企業が2025年中のIPOを準備していると明かされた。
加えて、VCからの資金流入も回復傾向にあり、2023〜2024年の水準を上回る年率で推移していると分析されている。
規制整備が呼び水に 多様な投資機会が拡大へ
モルガンは、GENIUS法の存在が、暗号資産関連ビジネスの成長環境を整備する鍵となりつつあると指摘する。
GENIUS法による環境整備がIPOやVCによる資金調達を後押しし、結果的に市場全体の成熟を促すという。
特に、IPOの増加は投資家にとって、ビットコインやイーサリアムといった主力通貨以外への分散投資機会を広げる手段として機能すると述べている。
暗号資産業界におけるブロックチェーン基盤技術、決済インフラ、トークン化領域など新興分野への投資が加速すれば、エコシステム全体の拡張にもつながる可能性がある。
一方で、規制の明確化が即座に安定性や持続性を保証するわけではない点に注意が必要だ。
GENIUS法案はまだ審議中の段階にあり、その成立・施行には時間がかかる可能性がある。
また、規制が強化されすぎた場合、一部のスタートアップや中小のブロックチェーン企業にとっては、参入障壁が高まるリスクも指摘できるだろう。
今後、GENIUS法案の成立と施行が順調に進めば、米国は世界的に見ても最も制度整備の整った暗号資産市場の一つとしての地位を強化する可能性がある。
特に、ステーブルコインという実用性の高いユースケースに対する規制基盤が整えば、暗号資産が決済・金融インフラとして本格的に社会実装される道筋が開かれるだろう。