NEC、生成AIで税番特定を支援する「AI税番判定サポート」提供 輸出入業務の効率化と技術継承に寄与

2025年6月13日、日本電気株式会社(NEC)は、輸出入時に必要な統計品目番号(税番)の特定を生成AIで支援する新サービス「AI税番判定サポート」の提供を開始すると発表した。通関士不足や技術継承の課題に対応する狙いがある。
生成AIが通関実務を支援、税番特定を効率化
NECが発表した「AI税番判定サポート」は、国際貿易において重要な役割を果たす輸出入統計品目番号(税番)の特定を、大規模言語モデル(LLM)を活用して支援するサービスだ。
税番とは、世界共通の分類基準に基づき、貨物を分類・識別するためのコードであり、通関時の申告に不可欠な情報である。
利用者は、対象品目の概要とHSコードの「類」や「類項」を入力することで、生成AIが関税率表解説などの情報を分析し、該当する税番の候補とその根拠を提示する。
これにより、専門的な知識を有さない利用者でも、制度に即した判断が可能になる。
さらに、入力情報が不十分な場合は、AIが用途や材質など、補足すべき情報を提案。利用者がそれに応じてデータを補完すれば、再解析によって精度の高い税番候補が提示される仕組みとなっている。
同サービスの中核技術には、NEC独自の「NEC Generative AI Service」が採用されており、安全性や信頼性にも配慮された設計となっている。
既存のキーワード検索や類義語検索よりも高精度で、業務負荷を軽減しつつ、より確実な税番判定を実現するという。
AI活用で通関業務の省力化と技術継承を後押し
今回のサービス導入は、通関業務における属人的な判断や知識の偏在という課題に対する打開策として注目できる。特に、経験豊富な通関士の高齢化と後継者不足が深刻化する中、AIによる支援は技術継承の観点からも有効と言える。
税番の特定には膨大な条文や分類基準の読み解きが求められ、制度改正にも迅速に対応する柔軟性が不可欠である。その点、生成AIは常に最新の情報をもとに推論でき、継続的なアップデートによって業務水準の維持が期待される。
また、輸出入ビジネスにおいて、通関遅延はコスト増や納期遅れに直結する。AIが判断補助を行うことで、判定のばらつきや人的ミスを抑え、業務の迅速化と精度向上が図れる点もメリットと言える。
一方で、最終的な税番確定は人の判断に委ねられるため、AIの提案が常に正しいとは限らないという留意点もある。過信を避け、あくまで判断支援ツールとして活用するバランス感覚が求められるだろう。
今後は、ほかの通関関連業務へのAI展開や、多言語対応によるグローバル展開も視野に入る可能性があり、貿易実務のデジタル化をさらに加速させると考えられる。