グーグル、日本で生成AI支援策発表 人材育成と地域課題に対応

2025年6月5日、グーグルが東京で開催したイベント「The Beyond Series: Research@Tokyo」において、日本における生成AIの活用支援策を発表した。地方自治体や教育機関との連携、専門研修の提供など多面的な取り組みが展開される。
生成AIスキルの普及と各種支援を同時展開
グーグルは、日本国内での生成AI活用促進を目的とし、複数の新プログラムを一挙に打ち出した。
注目されるのは、有料資格認定プログラム「Google Prompting Essentials 日本語版」の開始だ。これは生成AIの活用方法を体系的に学べる講座であり、日本リスキリングコンソーシアムと連携して、先着1万名に対して無料受講枠が提供される。
また、地方自治体向けには「Local Growth パッケージ」を新たに発表。これは、地域ごとの課題に最適化された生成AIモデルの実装支援や、デジタル人材の育成を柱とする。
すでに大阪府、広島県、大分県など8府県との協力が進行中であり、地域主導のデジタル変革が加速する見通しだ。
さらに行政職員向けには「AI Connect アカデミー」が提供され、対面型の研修を通じて実務でのAI利活用を支援。教育機関には「Gemini アカデミー」、中小企業にはサイバーセキュリティを含む専門研修も用意されており、あらゆる層への波及を意図した包括的な戦略が明らかとなった。
研究分野においては、東京科学大学および産業技術総合研究所では、日本語特化型の大規模言語モデル(LLM)「Gemma-2-Llama Swallow」を開発。Googleの生成AIモデル「Gemma」を基盤とし、モデルサイズは9Bで、既存の大型モデルに匹敵する日本語性能を備えているとされる。
また、高齢者の健康維持を目的としたウェアラブルデバイスの研究や、重度障がい者向け支援ツール「Project Voice」のオープンソース化など、社会包摂型のテクノロジー活用も同時に進められている。
人材育成と地域課題の解決に広がる可能性と課題
今回の施策は、単なるAI普及にとどまらず、日本の労働市場や地域経済へのインパクトが期待されている。
とりわけ、地域社会においては、生成AIを活用することで、人口減少や高齢化といった構造課題に対応する新たなツールとなる可能性がある。職員や住民自らがAIを活用し、地域に適した解決策を導き出す仕組みは、これまでにない自律的なデジタル変革を促す。
一方で、ツール導入だけでは効果が限定的になるという可能性も考えられる。
特に自治体におけるAI活用は、運用体制やガバナンス、人材確保といった面で課題を抱えるケースが多い。グーグルの支援策が、こうした実務面にまで踏み込めるかが、今後の成否を左右する。
生成AIを起点とした各種取り組みは、デジタル格差の是正と持続可能な地域社会の構築に向けた実験とも言える。
ただし、こうした試みに本質的な価値を持たせるには、単なる技術提供を超えた継続的な伴走支援が不可欠であるだろう。