半導体市場、2025年も2桁成長へ AI特需がけん引も非AI分野は低調継続

2025年6月3日、米国の業界団体「世界半導体市場統計(WSTS)」が2025年春季の市場予測を発表した。世界の半導体市場は生成AIやデータセンター投資を背景に、2024年に続き2025年も2桁成長を維持する見通しだ。
ただし、AI非関連分野では依然として地政学的リスクが成長を抑制している。
生成AI需要が市場成長を主導、地域格差と地政学リスクも顕在化
世界半導体市場統計(WSTS)の発表によれば、2024年の半導体市場は前年比19.7%増の6305億4900万米ドルに達した。生成AIの急速な普及により、データセンター投資が活性化し、AI演算に不可欠なメモリや高性能ロジック製品の需要が急増したことが要因だ。
メモリ市場は前年比79.3%増の1655億1600万米ドル、ロジックは20.8%増の2157億6800万米ドルと推定されている。
WSTSは2025年も市場拡大が続くと見ており、前年比11.2%増の7008億7400万米ドルを予測。AIの活用範囲はクラウドからエッジ、さらにはIoTや家電領域へと広がっており、関連製品が市場成長を引き続き牽引するとされる。
一方で、センサーやオプトエレクトロニクス、ディスクリート製品など非AI分野は軒並み減少。生成AIに集中する投資の裏で、分野ごとの格差が拡大している。
地域別では、2024年に米州が前年比45.2%増と突出。2025年も米州とアジア太平洋が成長を主導すると見られるが、日本(0.6%増)や欧州(3.4%増)は回復が鈍く、成長率に差が出ている。日本市場は円安の影響もあり、2025年には7兆1764億円と前年比1.4%の増加にとどまる見込みだ。
AI主導で拡大続く半導体市場、問われる構造改革
世界の半導体市場は、生成AIの普及を軸に2025年も高成長が見込まれており、特にメモリやロジックといったAI関連製品が需要を押し上げると予測されている。
クラウドからエッジ、さらにIoTや家電領域に至るまで、AIの利用範囲は今後も拡大していくと考えられる。
一方で、センサーやディスクリート製品といった非AI分野の低迷は続いており、市場の成長が特定領域に偏っている構造的課題が表面化している。
このような偏在は、企業の投資判断や供給網の設計においてリスクとなる可能性がある。AI依存の強まる市場構造は、技術革新と共に脆弱性も併せ持つため、多様な需要に応じた製品開発とバランスの取れた投資配分が求められる。
また、地域別では米国とアジア太平洋が引き続き成長をけん引する一方、日本や欧州は伸び悩みが顕著であり、為替や政策面を含む外部環境の影響を受けやすい構造にある。こうした地域間の成長格差は今後さらに拡大するおそれがあり、各国・地域が産業支援策や人材育成を通じて競争力をどう確保していくかが焦点となるだろう。
AI特需が市場全体を引き上げる一方で、その影にある構造的課題と地域バランスの見直しが、中長期的な成長持続の鍵になると見られる。