日本郵便、住所を7桁の英数字に変換する新サービス「デジタルアドレス」を始動

2025年5月26日、日本郵便が新サービス「デジタルアドレス」の提供を国内で開始した。従来の長い住所を7桁の英数字で置き換え、ECや郵便業務の利便性向上を図る。
7桁のコードで住所を代替 郵便局アプリから利用可能に
日本郵便は、住所情報を7桁の英数字に変換・伝達できる新サービス「デジタルアドレス」の提供を5月26日より開始した。これは、同社のIDサービス「ゆうID」に登録されている住所を、短い英数字コードに変換する仕組みである。
従来の住所表記では都道府県から番地、建物名まで記載が必要であり、ECやWebサービス上での入力に煩雑さがあった。
これに対して「デジタルアドレス」を使えば、長文の住所をたった7桁の英数字で簡潔に伝達できる。
現在は、郵便局アプリにおける「ゆうパック」や「ゆうパケット」の「送り状作成機能」で利用可能となっており、該当欄にコードを入力するだけで登録済みの住所が自動的に呼び出される。
ただし、現時点では宛名欄に「デジタルアドレス」単独で郵便物を送ることはできない。
今後は、日本郵便の内外でサービス連携を広げていく予定だ。事業者向けに「郵便番号・デジタルアドレスAPI」の無料提供を開始し、さまざまな業種で同APIを活用することで、デジタルアドレスを住所に変換しやすくなり、日本郵便以外のサービスでもスムーズに利用できるようになる。
業界連携で広がる可能性 住所表記の常識が変わるか
「デジタルアドレス」のユーザーにとってのメリットは大きい。住所の入力ミスや表記揺れを防げるほか、転居時の変更手続きも簡便になる。
生涯同一のコードを保持できるという特性は、IDのように個人にひも付いた「住所の簡略化」として新しい標準を打ち立てる可能性がある。
一方で課題も残る。プライバシー保護や誤変換のリスク、また利用範囲が限定的な現段階では、完全な住所の代替とは言い難い。
加えて、ユーザーや企業側の対応準備も必要であり、導入初期には混乱も予想される。
また、長期的に考えるとすれば、住所の概念そのものを変革する可能性を秘めている。たとえばスマートフォン一台で住所を記録・共有できるようになれば、紙媒体を前提とした社会構造からの脱却が進む。これは日本に限らず、各国で進行中の行政手続きのデジタル化と歩調を合わせた動きである。
今後の鍵を握るのは、民間との連携と実用範囲の拡大だ。APIの公開により、ECや物流、不動産、行政サービスなど複数の分野で「デジタルアドレス」が標準化されれば、その利便性と定着度は飛躍的に高まる可能性がある。
また、ゆくゆくはマイナンバーとの連動といった、より包括的な個人IDインフラの一部として位置づけられる未来も視野に入る。
ただし、それには制度設計や法整備、セキュリティ基盤の強化が不可欠である。導入初期の現在はまだ補助的機能に過ぎないが、10年単位のスパンで見れば、住所という社会基盤の“再設計”が進む起点となり得るだろう。